もっと大事なことに、10日にデービッド・キャメロン英首相が訪日し、日英の新たな戦略的パートナーシップが打ち出され、昨年末の武器輸出三原則緩和後はじめて共同開発するパートナーに正式に英国を選びました。首脳会談で言われたこれから決める具体的な装備の見当というか、英国側の意中とされるヘリコプターについて調べているのを備忘録的にまとめようと思います。
there are opportunities for people like AgustaWestland, who make helicopters, who are on this plane.
キャメロンが協力する具体的な装備で報道陣に対して挙げた「ヘリコプター」と、代表が同行して来日した防衛企業6社。これはguardianの記事によればBAE Systems、AgustaWestland、Rolls Royce、MBDA、Thales、Babcockの名前が出てますが、このうちBabcock社以外の5社は例えばSea Kingヘリコプターとその装備に関係しています。詳しくはこちらのNaval Technologyのページ(英語)をご覧いただければ早いです。
上のサイト曰く機体はAgustaWestland、エンジンはRolls Royce、魚雷はBAE Systems、対艦ミサイルSea EagleがMBDA、アップグレードされたAirborne Surveillance and Controlヘリに搭載されているSearchwater 2000レーダーシステムはThalesがそれぞれ担当しています。この5社を伴って多用途ヘリコプターを共同開発をしたいという意向を英国側は示しましたが、様々な型と用途があって――Mk4、’Junglies’は部隊輸送、Mk5は捜索救難、Mk7'Baggers’は2003年までは低空の敵航空機やミサイルから艦船を護衛――イラク戦争のときは空母HMS Ark Royalを離発着して任務に臨み、またリビアでのOperation Unified ProtectorにおいてはHMS Ocean艦載でISTAR能力でアパッチ攻撃ヘリの(侵入と帰還ルートの)アシストをしていた(以上の情報はDefence System 2012 Springのp75、Simon Michell氏の稿に依る)このヘリは、次に開発するもののベースとして我が国海自にとっても色々と魅力的なのかなと思いました。
イラクでISTAR能力を活かした監視で地上の脅威を察知してデータリンクを通じてRoyal Marineに送ったりアフガンでIEDsや麻薬密輸業者を発見したり、と方々のミッションにおいて不可欠・重要な役割を果たしてきたASaC7は2016年までに全て退役し、AW101 MerlinがASaCの役割を引き継ぐことになっています。英国としては軍縮のなかで自国の防衛産業を維持する上でも、アジアのマーケットと日本のニーズを鑑みた上でも、この後継機・次世代機にあたるものを共同開発でやりたいのではないかなと邪推した次第です。(フジサンケイ・ビジネスアイの「軍用ヘリ、争奪の空中戦激化~」の記事が軍拡競争で急成長しているアジア市場の事情について参考になるかと思います)
またキャメロンが具体名を挙げていたAgustaWestland社は以前にはAW101ヘリコプターを14機、防衛省と契約、日本では川崎重工がライセンス生産して2006年より現在まで計7機納入された「実績」があります。こちらもエンジンは日本ではRolls Royce社を採用、またASaC7に使われていたThales Searchwaterのレーダーを転用するという話もあり、兵装にはBAE Systemsが当然の如くタッチしています。こちらのアップグレードを日英防衛装備共同開発の対象にゆくゆくは、というのも考えられるかもしれません。
キャメロンは陛下に謁見し、日産を訪れ、日英首脳会談を済ませると11日に次の目的地インドネシアへと飛びました。その次には欧米首脳としてはじめて改革を始めたビルマ/ミャンマーを訪問する予定です。今回彼と野田首相の間で政治的に合意を得たものが事務方で詰めて形になる、明確なプロジェクトになるまでは暫く時間がかかりますが、これをステップに両国がさらに緊密に安全保障を含む広範な分野で協力を加速させることを期待したいと思います。
(補)今回は他に民生用原子力での協力の枠組みが打ち出され、宇宙分野での協力について覚書が取り交わされたようです
0 件のコメント:
コメントを投稿