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10/11/2014

オバマのDo the stupid stuff

オバマ大統領は経験者や専門家が語ったことに耳を傾ける必要がある。米国とフランスが「イスラム国(IS)」掃討に乗り出したとき、トニー・ブレア前首相は「地上軍派遣の選択肢を排除すべきではない」と述べたデンプシー米統合参謀本部議長も議会の証言で地上軍の関与の可能性について言及した

早くからオバマ政権の当局者が認めているように、エアパワー、空爆に依存した戦法では短期間に目に見える勝利を収めることはできない。国防総省のジョン・カービー報道官はシリア反体制派やイラク軍に地上での役割を期待する発言をしたが、両者はISを打倒するには明らかに力不足だ。

私は自由主義的・人道的介入を支持するし、ISの過激主義とテロリズムを打倒しなければならないと考えるが、今オバマ政権と有志連合が実施しているイラク・シリアでの空爆介入には極めて否定的だ。ISの残虐行為と脅威に晒される市民を見て「何かをしなければならない」というのは間違いではない。しかしただ「何かをする」のは戦略ではない。

改めてクラウゼヴィッツの言を借りるなら「戦争は別の手段による政治(政策)の継続」である。米国と有志連合の指導者は対IS戦の先の構想を持ち得ているのだろうか? 手段も目的も、軍事合理性も政治合理性も欠いたシリア空爆はまさにDo the stupid stuff、馬鹿をやることでありオバマが避けてきたことではないのか? それから、デイビッド・キャメロン英首相は野党のリーダーだった時を思い出すといい。「ミサイルと爆弾は最悪の大使」だ。

今やっているのはただのcreeping interventionだ。ずるずると深みにはまり、長い戦争を強いられる。それがもたらすのは災禍だ。米情報機関の分析では、ISは米国にリーチしテロ攻撃を行うだけの能力は持っていない。米人ジャーナリストの斬首は野蛮で吐き気を催すものだが、この見通しのない戦争を始める切っ掛けとして相応しいものではなかったろう。


英仏を蝕むポピュリスト政党の台頭

 労働党党首エド・ミリバンドは不人気だ。多くの有権者が彼を首相の器だと見なしていない。先に開かれた党大会では有権者の重要な関心事である財政赤字と移民問題についての言及を失念した(無謀にもノートなしで演説した結果だ)。エド・ミリバンドと影の蔵相エド・ボールのコンビはキャメロン・オズボーン相手に経済政策の信頼度で大きく水を開けられている。

 それでも来年5月の総選挙で、エド・ミリバンドがダウニング街10番の住人となる可能性は日増しに高まっているように思える。キャメロン首相は彼を恐れてはいない。首相にとって最も脅威なのは彼の左からではなく右から来ている。英国独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージェと大陸欧州と移民が嫌いな、元々保守党を支持していた人々だ。

 そのUKIPは今日、歴史的な勝利を得た。補欠選挙で、保守党から鞍替えした元職候補が同党初のウェストミンスター議会の議席を確保したのだ。この予期されていた結果に、しかし保守党はさらなる混乱に陥ろうとしている。次は誰が保守党を捨ててUKIPに走るのか? 総選挙までUKIPが支持を拡大し続け、ファラージェと寝てミリバンドと目覚める投票者が続出するのか?

 一方、英仏海峡の向こう側では、稀に見る不人気と経済停滞に苦しむオランドの社会党政権を後目に、マリーヌ・ルペン率いる国民戦線(NF)の快進撃が止まらない。先の上院選挙では初めて議席を獲得した。UKIPとNFは共に5月の欧州議会選挙で躍進した勢いを失わず、各々国内政治でも無視できない存在となった。

 英仏両国の政界を揺るがす、両党の共通点は反EUと反移民、そして反エスタブリッシュメントだ。彼らの考えがポピュラーになりつつあることは注目そして憂慮すべきことだ。トラディショナルな政党・政治家から離れた人心が、親しみやすさの裏に満ち溢れた偏見に引き寄せられている。ファラージュは「ルーマニア人が隣に引っ越して来たら心配だね」と軽口を叩き、UKIPが女性からの支持を得られていないことについて「花でも売ればいい?」とのたまう男だ。

 過去20年、ドミナントな政治の傾向は中道化、英米における「第3の道」路線の推進だった。センターグラウンドを確保し、両翼の支持層を得ることが正しい戦略だった。今起きている右からの揺さぶりが、これにとって代わるものとなるかもしれない。