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7/13/2011

Lebowと中国の方向性についてのメモ

 IISSの図書館で読んだRichard Lebowの'Why Nations Fight?’(2010 CUP)の抜粋メモ。
  1. The most aggressive states are rising powers seeking recognition as great powers and dominant great powers seeking hegemony.(p112)
  2. Rising powers and dominant powers rarely make war against each other. When they do, rising powers are allied with at least one great power. (p116)
  3. The preferred targets of dominant and rising powers are declining great powers and weaker third parties. They also prey on great powers who are perceived as temporarily weak, preferably in alliance with others. 
  4. So-called hegemonic wars are almost all accidental and the result of unintended escalation (p117)
  5. Unintended escalation and miscalculation of the balance of power have deeper causes than incomplete information. (p121)
台頭した中国の行くコースを考える上で、過去の大国の歴史をデータにしてルボウが導き出した上記の5つの命題は参考になる。(特に1、4、5) 各パワーの定義は: 大国Great power (status conferred on powerful political states by other powerful states) 、新興国Rising power(states intent on gaining recognition as a great power and recognised as such by their contemporaries) 、支配国Dominant (great power that is significantly more powerful than other great powers)。例えば日本は1868-1905年にかけて新興国、1905-1945年の間は大国、戦後は1945-1990年に新興国で1990年からは明示されていないが大国でいいだろう。 中国PRCは(1949-1990 Rising 1990-present Great)とルボウは定義している。支配国、ドミナントパワーとして挙げられているのは France (1659-1815)と US (1918-)の二カ国のみ。英国に関しては17世紀後半から今日までの300余年にわたって一貫して大国Great powerと本書ではされている。

新興国と支配国が戦うことは極めて稀とされる。例としてはフランスが1648年ハプスブルク家のスペインに攻撃したケースと、PRCが朝鮮半島で米軍と交戦した2例のみ。ルボウの提示しているデータでは支配国が仕掛けた戦争は24あり、新興国から始めたのは27例とされている。新興国の起こした戦争のうち10が大国であり、そのほとんどが大国か支配的国家と同盟を組んでのもの(例:1740年のフランスとともにオーストリアに攻撃したプロイセン)。支配的国家が新興国に対して戦争を仕掛けた事例はなく、相手は大国が9、衰退国declining powerが5、弱小国weak power相手が10とカウントされている。基本的に大国を巻き込む戦争では仕掛け側は敗北しており、全てのシステミックな戦争を仕掛けた支配国・大国は敗れている。

 21世紀においてRising Great powerである中国がどのような方向に進むか、歴史に照らし合わせれば中国が覇権(hegemony)を追求するかによるところが大きい。ルボウの枠組みでは中国は既にRising powerからGreat powerになっているので2の命題には当てはまらないだろう。これまでのところ新たに台頭してきた大国はその時の覇権国と衝突してきた、とされている。Hu,Angang  (2011)は ‘China in 2020: A New Type of Superpower’ Brookings Institution Pressで「現代の相互依存の世界のため、超大国(アメリカ)と勢力圏、天然資源、市場へのアクセス、軍事力の優越を巡ってゼロサムの競争をしない、従来のルールの例外に中国はなるだろうと主張している。
 
 一度assertiveな外交方針を見せてから再び平和的台頭に軌道修正するのは難しい。アイケンベリーが言う既存のリベラルな国際法秩序レジームの中での国益追求も、先般のWTO敗訴や南シナ海の領土係争で海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)を否定するような構えなどを踏まえると、おそらく壁にぶち当たると思われる。もっとも、米中衝突の機会が増え、突発的で想定外のエスカレーションが起こるとしても、その理由はリアリストたちが重視する勢力均衡の変化や国際システムの構造より、中国の国内政治要因が大になるのではなかろうかと現時点では見ている。

 戦略文化から考察しても、せいぜいactive defenceであって冒険的な拡大政策とは認識しない。中国はこの20年でグローバルなプレイヤーになった、つまりそれだけ経済成長し発展したことでこれを維持する資源獲得は共産党体制維持の見地からもさらに死活的なものになっている。ペルシャ湾から南シナ海までの長いSLOCの安全確保はそれこそ日本と同様に重要であり、裏を返せばかの国の柔らかい腹でもある。東アジアでは海自、インド洋ではインド海軍を、圧倒的な優位を誇る米海軍と共に警戒することになる。大国化に伴う問題はもう一つある。それは自国のパワーをいかに扱う(tame)か。南シナ海で現実のものとなっているが、不器用な振る舞いは周辺諸国を米国側に追いやって対中包囲網の形を作らせることになる。ナイが指摘しているように、中国を封じ込めるのは他ならぬ中国というやつだ。米国の対応はLyle Goldsteinが提言しているが、介入したい誘惑に駆られず、柔軟に実践的に、「外交」「対話」で中国を宥め賺すことになろう。Engage but hedge、仮に中国が非協力的であったら、その時はほぼ自動的に東アジアに米国にとって好ましい態勢が出来てくる。