tag:blogger.com,1999:blog-35874380038593069772024-03-19T13:03:24.042+09:00Till the end of history...Let us go forward together.DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.comBlogger72125tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-52575631403469789262017-09-24T17:40:00.001+09:002017-09-24T17:45:26.104+09:00北朝鮮リスクをどう管理するか(その1)<div>
先ず事実関係のおさらい。</div>
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〇2016年初から2017年半ばまでに北朝鮮は核実験3回(2016年1月、9月、2017年9月)とミサイル発射実験29回を実施。これに対し、国連安保理は対北決議を5回採択(最新は9月11日に採択された第2375号)。</div>
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〇北朝鮮(≒金正恩)は米本土を射程とする小型化された核弾頭搭載可能な弾道ミサイルの完全稼働を目指し、核・ミサイル開発を推進。</div>
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〇これを達成する上で課題となるのは①核弾頭の小型化の完全化、②弾道ミサイルの大気圏再突入能力の獲得、③米本土の標的までの正確な運搬能力の確保。米情報コミュニティは北の核・ミサイル開発が想定より速く、能力が向上していると評価を修正。現在の実験ペースが続けば、1~2年以内に必要な能力水準に到達の可能性。</div>
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〇国連安保理決議に基づき制裁強化が為されているものの、履行面において十分に遵守していない加盟国もあり、また、制裁が奏功する場合にも一定の時間が必要。常任理事国のうち、ロシアは制裁に懐疑的、中国とロシアは「圧力」より「対話」志向し、北の核・ミサイル開発の凍結と米韓軍事演習の凍結を併行することを提案。</div>
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〇米国は北の核完全武装阻止において軍事行動を検討。軍事行動を起こした場合、北の報復攻撃により韓国、日本に甚大な被害が生じる可能性。中国とロシアは米国の軍事行動、対外介入そのものにネガティヴ、韓国は自国被害の虞から極めて慎重。</div>
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次にアサンプション。</div>
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〇核・ミサイル開発は、対米抑止力を得ることで、現行体制の保証(米による体制転換を目的とした介入阻止)を第一の目的としている。ゆえに北は進行中の核・ミサイル放棄を交渉の材料としない。</div>
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かつての瀬戸際外交、危機を高めて経済支援等の譲歩を勝ち得るための手段でなく、米との交渉においても引き出したいのは「体制保証」そのものではなく「核保有国としての承認」であると見ています。米朝枠組み合意、六者協議の際と異なり、資金的・物的支援を重視していないのは、先ず経済面で重要なパートナーである中国との関係を考慮していない(本年のミサイル発射のいくつかは米中首脳会談、一帯一路国際会議、BRICSサミット等中国の主要な外交日程と重なり北京の「面子」を潰している)、これまでに交渉の条件提示さえ行っていない点から伺えます。</div>
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政策研究大学院の道下先生は<a href="http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/279800.html">体制保証目的説に疑問を呈し、説得力がない</a>と述べていますが、個人的にはイラクやリビア、シリアにおける米国と有志国による介入と体制転換を見て、生存のための核抑止力獲得は必要であると北は確信していると見ます。北の国内面を見ても、核武装の達成は若い金正恩の権威を高め、権力基盤をより強固なものとすることに資すると分析します。米国に対する挑発・刺激には対内メッセージの側面もあるでしょう。それから、韓国に対する限定的な軍事行動に関しては、2010年の延坪島砲撃事件、天安沈没事件を考慮すれば、「安定と不安定のパラドックス」はある程度核ミサイル無しでも成立するとの見立てです。</div>
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〇北を除く六者会合参加国のうち、日韓中露にとって北の体制崩壊は基本的に望ましくない。難民の受け入れ対応等内政面、北の現体制崩壊後の枠組み作り等外交面双方で難しい対応を迫られる。</div>
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最もわかりやすいのは国境を接する中国・韓国でしょう。100万人以上の難民が押し寄せる、その対応を想像するだけでも頭が痛くなります。日本も一定数のボートピープル受け入れは大きな課題となります。</div>
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全ての関係国にとって、現体制崩壊後の半島をどうするかも答えの見えない問いです。地域の勢力均衡、在韓米軍の扱い、新秩序形成に関する労力と必要資源、事後処理で取り組まなければならないことを洗い出し、国際的な合意を得て、新たな国造りに取り組む、これらに直面したい各国政策当局者はいないと思います。</div>
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〇北が完全核武装国家となることは、米と同盟国の安全保障、地域の安全保障のみならず、将来的な技術移転により核不拡散レジームを損ねかねず、国際安全保障にも深刻な影響を及ぼす。</div>
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以上のとおり整理したところで、卑見の結論を開陳すると、「限定的な核・ミサイル開発施設・発射台を標的とする軍事行動というこれまでなかった手段により、北の指導部に核・ミサイル開発が自らの目的を果たすどころか阻害する方向性であると再考させて外交交渉の場に出てくるよう仕向け、不可逆的で包括的な検証可能で透明性ある核・ミサイル放棄に合意させることを目指す」になります。</div>
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北の振る舞いを外交圧力で改めさせることにはこれまで成功していません。石油の輸出制限や労働者派遣等による外貨獲得を阻止する強化された制裁策も、望ましい効果が出てくるまでに相当の時間を必要としますが、この1年7か月に北が幾度となくミサイルを発射し、能力を急速に進展させていることを踏まえれば、猶予は限られています。</div>
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軍事行動もまた容易な道ではありません。体制転換や金正恩暗殺のような斬首作戦は確かに核・ミサイル開発を止めるでしょうが、別のより複雑で中長期的にマイナスとなる帰結をもたらすでしょう。ポスト金体制について明確で実現可能な構想はなく、あったとしたところでアフターケアに膨大なリソースを要求されることは間違いなく、予想しない波及効果も生じるでしょう。</div>
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ピンポイントでの限定攻撃も、北の行動を変更させるだけのインパクトを持ちつつ、大規模報復から全面的な戦争へのエスカレーションを回避する、そのような攻撃対象を選定するのは干し草の山から1本の針を見つけるような作業になるでしょう。また、限定的であったとしても、最も直接的に影響を被る同盟国韓国、日本との調整、主要なステークホルダーでありその協力を得ることが重要である中国との関係、加えて国際社会で一定の支持を得て正統性を確立する等、政治的外交的作業も容易ではありません。</div>
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日本として、また国際社会として、北の核・ミサイル開発が完了阻止は統一された目的です。核弾頭搭載弾道ミサイルの射程に入る個々の国家の安全保障に対する脅威(物理的挑戦)であることはもちろん、NPTを脱退しIAEAの査察官を追い出し類似の国連安保理決議に違反した国家が事実をもって核保有国であることを認めさせる先例を許すことは、国際法と規範に基づく秩序を大いに損ねるもの(規範的挑戦)です。</div>
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これを達成する上で、あらゆるオプションがありますが、現実的な手段は相当限られていると認識します。比較的可能性のある方策でも相応のリスクとコストを負わねばならないでしょう。</div>
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冒頭で説明したとおり、北は幾度となく実験を繰り返し、その能力は急速に向上しています。今後もさらに実験を繰り返していく中で、確実に機会の窓は閉ざされていくでしょう。そうなる前に、核・ミサイル開発を諦めさせるというこちらの意志を強制するアプローチを取ることが必要です。</div>
DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-90949831973091752612017-06-30T05:25:00.000+09:002017-08-30T05:25:33.886+09:00お前のようなエコノミック・オフィサーがいるか 決着は一瞬で、均衡はあっけなく崩れる。張り詰めた神経が一瞬緩む。<br />
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「アフリカ連合平和維持ミッション(AMISOM)のCONOPS」</div>
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その一言を聞き漏らさない。CONOPS、だって?</div>
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CONOPSとはConcept of Operations、作戦構想の略称だ。</div>
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そんな専門用語、ただの経済担当官(エコノミック・オフィサー)が知るものじゃあない。</div>
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職場に戻った後で経済担当の同僚に聞いてみた。「CONOPSって知ってます?」(答えは、もちろんノー、ニェット。)</div>
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疑惑は確信に変わった。目の前にいる男は外交官ではない。</div>
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それがGRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)かSVR(ロシア対外情報庁)かまでは分からない。</div>
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だが、こちらだって駆け出しながらインテリジェンスで飯を食っている。</div>
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正体が知れたら、やることは一つ。</div>
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逃げるんだよォ!</div>
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腕時計をちらっと見て、シグナルをそれとなく送る。</div>
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「時間は大丈夫か?」</div>
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「申し訳ないが、そろそろミーティングがあるので行かなければならない」</div>
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この国の内政について当たり障りのない意見交換をした後で、間合いを切る。</div>
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「次は南スーダンとエリトリアについて話がしたい」</div>
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「ああ、わかった。また今度」</div>
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ホテルを後にし、車に乗って一息つく。何とか、してやられずに済んだ。</div>
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手が汗で湿っている。</div>
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と、同時にそこはかとない充足感があった。</div>
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「引き分けだなー」</div>
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本質的なことに関して情報を引き出せなかったし、こちらも喋りすぎなかった。と思いたい。</div>
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しかし収穫はあった。少なくとも相手が何者であるかを看破できたろう。</div>
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おそロシア。</div>
DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-22296546503646477082017-06-19T05:24:00.003+09:002017-06-19T05:35:29.444+09:00探り合い 上司に先日の接触のこと、意見交換の話をしたら「気を付けてください」とだけ言われた。相手はロシアの人間だから当然だろう。この国で激しい情報戦を繰り広げるとも思わないが、隙を見せたら何があるかわかったものではない。<br />
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レセプションで交換した相手の名刺を確認する。向こうは経済担当(エコノミック・オフィサー)と自己紹介していたが、こちらが地域情勢をフォローしているという話に、自分も一部カバーしていると応じていた。</div>
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この国のロシア大使館で何人勤務しているかは承知していないが、大きな大使館だったし、レセプションを見た限りではこちらより人員は多そうだった。人手不足の大使館なら経済と政治を兼務していてもおかしくないが、ロシアの規模であれは普通はそのような体制を取らないだろう。</div>
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当日。朝のデスクワークに一区切りをつけたところで、ネクタイを締め、メモ帳とペンだけを持って出る。移動中、どう躱すか、相手の関心事は何かに考えを巡らす。</div>
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約束の時間の数分前に先方の指定したホテルに到着した。近いからいいかと思って受け入れたが、利用したことのないホテルだ。欧米系の大きなホテル以外でのアポはあまりないが、思ったよりはきれいでしっかりしていた。</div>
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入口の金属探知機をパスしてロビーを奥に進む。先に到着してコーヒーを飲んでいた相手が立ち上がり、こちらに手を振った。</div>
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形式的な挨拶を交わし、互いに席を着く。飲み物を進められたので、ウェイターを呼び、コーヒーを注文した。運ばれてきたコーヒーに一口つけると、いたって普通の味がした。本題に入る前に一言言わなくては。</div>
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「申し訳ないが急ぎの会合が入ったので30分したら行かなきゃいけない」 </div>
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これは、嘘。話が盛り上がってもつまらなくても、だらだら続ければそれだけリスクが増す。それに、このところ地味に仕事が忙しかった。本来必要のないアポで時間を浪費している余裕はなかった。</div>
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相手は、別に驚いた風もなく、わかったと話を切り出す。電話口では地域情勢について、としか聞いておらず、こちらも敢えて前もって余計な情報を入れないよう、尋ねなかった。何が出るかな、さいころ振ってのお楽しみ。</div>
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最初に尋ねてきたのは某国情勢についてだった。率直に言って意外だった。ロシアが深い関心を有しているというイメージはなかったし、我が国が重要なプレーヤーとして振る舞っているわけでもない。先ずは無難な話をして、警戒を解こうというところか。</div>
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意見交換ということで見方を「私見だが、一般論だが、」と断った上で、頭の中で情報をフィルタリングして公知の情報を基に話すように努める。この作業は何とか上手くいった。相手は淡々とこちらの話を聞いては次の質問を投げてくる。</div>
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はっきり言ってそう刺激的ではない、固い応答ライン。この国の政府当局者がこちらの照会に応答するときを思い出す。我ながらお利口さんな答えばかり、サービス精神には欠けるが、「こいつはわかっている」とある程度中身を知っているところは示さなければならない。</div>
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今後の見通し、キープレイヤーの戦略に対する評価、話は米国の某国に対する関与に及ぶ。ロシアとしてはやはり米国の動向は関心事か、日本から何か聞けると思ったのか。</div>
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何が相手にとって既知で何が未知か、欲しいのは情報か、それともこちらの分析評価、あるいはその能力を探っているのか。話ながら思案する。向こうは向こうで、こちらの話に耳を傾けつつ探っているような気がした。</div>
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合間に口の中を湿すためにコーヒーを啜る。ガードを下げないよう気を付けているが、個人的に関心があってフォローしているテーマだと、やや饒舌になりがちだ。</div>
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時計の針に目をやりたいのをぐっと堪える。短すぎず長すぎず、適当なところで切り上げたいが、まだ早い。</div>
DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-14625306842740169352017-06-18T16:47:00.000+09:002017-06-19T05:27:25.844+09:00接触 最近あった経験の備忘録。<br />
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日曜午後、仕事の携帯に見知らぬ番号からの着信。また、現地の人間が間違い電話か(この国ではよくある)と思って出てみると、電話の相手が無感情な声で英語で喋りはじめた。</div>
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「君とこの国の内政、地域情勢の意見交換をしたい。今度会えるか?」</div>
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相手の名前は、つい先日参加したレセプションで名刺交換したロシア大使館の経済担当書記官のものだった。その時は自分がロシア語を勉強したことや、モスクワに旅行したことを話題に会話を弾ませようと試み、何とも読み取り辛い相手の関心を惹こうとしたものだ。</div>
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いつが空いている? この日の午前なら。では〇〇ホテルで会おう、君のオフィスから近い。</div>
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アポが成立し、電話を切る。向こうがどういう気持ちかはわからないが、きっと表情は変わっていないだろう。こっちは、あちらからの接触に予想通りという満足感と、用心してかからなければならないという緊張感が入り混じっていた。</div>
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DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-10021088180545339512016-06-26T18:23:00.002+09:002016-06-26T18:23:46.611+09:00「Brexitの決定:英国はEUの新たな最良の友人になる必要がある」byマルコム・チャルマーズ【前半】<div>
英国民投票の「離脱」という結果を受けて、マルコム・チャルマーズ(Prof. Malcolm Chalmers)RUSI副所長が、RUSIウェブサイト上に「<a href="https://rusi.org/commentary/brexit-decision-uk-needs-become-europes-new-best-friend">Brexitの決定:英国はEUの新たな最良の友人になる必要がある(Brexit Decision: The UK Needs to Become the EU's New Best Friend)</a>」というコメンタリーを寄稿していたのを紹介したいと思います。</div>
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(注:<a href="https://rusi.org/people/malcolm-chalmers">チャルマーズ副所長は、英政府戦略防衛安全保障レビュー(SDSR)諮問パネルのメンバー、英議会国家安全保障戦略議会合同委員会特別顧問(2011年~2015年)、ジャック・ストロー&マーガレット・ベケット外相(当時)上級特別顧問等を歴任</a>した英外交安全保障政策のエキスパートです。私は院生のとき、KCLの客員教授であったチャルマーズ氏に英対外政策論を師事しておりました。)</div>
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構成は(1)序文、(2)政治、(3)経済、(4)新たな特別な関係構築、(5)欧州へのピボットとなっており、それなりに長いので(3)までを前半として、概要抄訳を紹介します。<br />
<br />
(1)序文<br />
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1.英国民投票でEU離脱の意思が示された今、欧州との新たな協力モデルを作ることが、英国にとって戦略的政策の最優先課題だ。</div>
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2.NATOとEUを通じた国家間協力の制度機構化は、第二次世界大戦以来の大陸の安全保障を支える上で重要な役割を果たし、共通の課題に対処し競争的ナショナリズムを抑え込むことを可能としてきた。</div>
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3.欧州協力論は変わらず力強いが、制度機構の形は、新たな課題と新たな政治的現実に対応する上で変化する。英国と欧州のパートナーが直面する課題は、差し迫る英国のEU離脱を前にして、新たな協力の枠組みをどのように形成するかについて合意することだ。合意に至るのは容易ではないが、失敗のコストは、英国と欧州のパートナーにとって、高くつくだろう。</div>
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<br />
(2)政治<br />
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4. 英国は今EU離脱の道にあるが、目的地は不確実性に覆われている。先ず、国民的議論の中心は誰が次の首相になるかになるだろう。しかし、この議論はまた、政党間、ビジネス界そして一般社会での激しい議論と分断につながりそうである。欧州はこれからしばらくの間、英国の政治論議の中心になりそうに見える。この議論の主要な問いは、欧州との望ましい関係の性質についてになるだろう。</div>
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<br />
(3)経済<br />
<br /></div>
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5.英国は、EUから流入する移民のコントロールを導入し、現在EUが握る市場規制を取り戻し、WTOのメンバーシップに基づいた貿易協定の交渉に向け速やかに動くことになる。</div>
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<br /></div>
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6.そのような政策の経済コストが、多くの予測者たちが現在予見しているぐらい大きいものと証明された場合、よりノルウェーとEUの協定に類似し、英国の規模と重要性を考慮にいれて修正された、新たな「特別な関係」を支持するよう政治指導者にますます圧力がかかるだろう。</div>
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<br /></div>
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7. そのような協定下で、英国は移動の自由継続とかなりの予算貢献の受け入れと引き換えに、EU市場への特権的アクセスを保つことになる。</div>
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<br /></div>
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8.多くの離脱支持者はそのような選択肢に猛烈に抵抗しそうであるが、国民投票後の急な景気後退という起こりそうな現実と、歳出削減と(または)増税の見通しが、どうであれ、より過激な離脱の選択肢の利点を説くことは難しくなる。景気後退は移民を減らし、移動の自由に関して変化の余地をもたらしそうである。</div>
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<br /></div>
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9.「特別な関係」オプションの包括的な原則は、英国は、いくつかの領域で現在加盟国として行っているよりも多くの国家的支配を行使し、しかし適切なところで多国間協力の利点を維持する、EUとの強い制度化されたパートナーシップを保つことを模索することである。このモデル上、英国はEUの最良の友人になりたいと熱望する。</div>
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<br /></div>
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10.他の欧州の指導者は、英国が完全に縁を切るのと新たな形態の密接な協力に動くことのどちらが好ましいかを独自に評価するだろう。彼らは強い国内の圧力、特にビジネス部門からの、英国との貿易コストの急激な増加を回避する協定に合意することを求める圧力に直面しそうである。</div>
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<br /></div>
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11.しかし欧州の政治指導者は、自国の欧州会議的な政敵が魅力的と思う前例を与えないよう、易々と英国を受け入れることに慎重になるだろう。</div>
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<br /></div>
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12.つらい景気後退が、難しい譲歩を受け入れるための英国への圧力を増やし、他方で英国の後を追おうとする他国を思いとどまらせるのに十分な痛みを負わせ、助けとなるだろう。</div>
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<div style="box-sizing: inherit; color: #666666; font-family: "Open Sans", sans-serif; font-size: 16.3px; margin-bottom: 1em; margin-top: 1em;">
(4)と(5)は【後半】に続きます。</div>
</div>
DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-62588103622888598132015-09-20T20:00:00.000+09:002015-09-20T20:53:42.830+09:00シリアの現状、不介入政策の帰結欧州の難民問題がここのところ話題になっています。泥沼の内戦にISの脅威に晒されているシリアや、シリアに比べればはるかにマシだけれども情勢不安定で過激派も入り込んでいるリビア、北朝鮮以上に自由のないアフリカのエリトリア、そのほかナイジェリアや、果てはアフガニスタンから、大勢の難民がドイツや北欧などを目指しています。<br />
<br />
シリアでは、2011年の紛争勃発以来、20万人以上が死亡し、400万人を超える人が国外に逃れて難民となり、また国内避難民も相当数発生しています。昨日、ヨーロッパを訪問中の米国のケリー国務長官は、難民問題の深刻化を受けて、紛争を終わらせるための新たな外交努力を呼びかけました(<a href="http://www.bbc.com/news/uk-34298826">BBC当該記事</a>)。<br />
<br />
<br />
反政府派の拷問、女性に対する暴行、市民への空爆、大量の殺戮、化学兵器の使用、ISの台頭。今日まで続き、なお好転の見込みが薄い惨状に、「早期に人道的介入をしていれば、あるいは阻止できたのでは」と考えさせられるところです。<br />
<br />
(以下は過去にシリアに触れたものです)<br />
<a href="http://alfred-geopolitik.blogspot.jp/2011/11/blog-post_29.html">「そう、シリアはリビアより難しく、ダルフールより酷くない。」(2011年11月30日)</a><br />
<a href="http://alfred-geopolitik.blogspot.jp/2013/08/8.html"><br /></a>
<a href="http://alfred-geopolitik.blogspot.jp/2013/08/8.html">「シリアに直ちに介入することが好ましくない8つの理由」(2013年8月29日)</a><br />
<br />
<a href="http://alfred-geopolitik.blogspot.jp/2014/10/do-stupid-stuff.html">「オバマのDo the stupid stuff」(2014年10月11日)</a><br />
<br />
(↑のうち最後のエントリーについては、今月16日にロイド・オースティン司令官が上院軍事員会の公聴会で証言したところ、米軍が訓練したシリア反体制派のうち、対IS戦に従事しているのが4、5人だそうです。空爆についても、8月26日付けのNYTの報道によると、米中央軍が情勢分析の方古書で歪曲を行ったと指摘がなされており、米軍の対IS戦略が機能していないものと見られます。)<br />
<br />
過去に、自分なりに情勢を分析した上で不介入を是としましたが、冒頭で挙げた死者数・難民数を見ると自問自答せずにはいられません。「これでよかったのか」と。これでいいわけがないのですが。各国の首脳や政策当局者が、当時介入しなかったのにはそれ相応の政治的、外交的、戦略的、あるいは法的な理由がありましたが、行動しなかった結果について重く受け止めなければならないでしょう。<br />
<br />
今日のシリアはアサド政権、反体制派、IS、アルカイダ系のヌスラ戦線など諸勢力が入り乱れ、また外部の勢力もトルコ、ヨルダン、湾岸諸国、そしてイランが複雑に絡んでおり、<a href="https://www.foreignaffairs.com/articles/syria/2015-08-11/new-great-game">一種のグレートゲームが展開されている状態</a>です。また、アサド政権を後援するロシアと米国の利害の不一致もあり、「大国政治の悲劇」の犠牲でもあります。<a href="http://www.wsj.com/article_email/the-rubble-of-obamas-syria-policy-1442531157-lMyQjAxMTE1OTE2ODExMTg3Wj">ある反アサド派で現在米国ワシントンD.Cに住んでいるシリア人によれば、オバマ大統領はこの問題で「イラン人に心配をかけることを望んでいない"President Obama does not wish to upset the Iranians"」というスタンスだったそうです</a>。この男性は「オバマが外交を通じて平和の遺産を残したいことは理解できるけど、なぜ彼が独裁者との取引が平和をもたらsと信じているのか理解できない」と述べています。<br />
<br />
シリア情勢を見ていると、冷酷な国際政治の現実と、理想の狭間で葛藤を覚えずにはいられません。DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-91860763339941156832015-09-19T23:30:00.000+09:002015-09-19T23:53:29.512+09:00集団的自衛権~通過点として平和安全法制整備法案と国際平和支援法案が成立し、日本は限定的な集団的自衛権の行使が可能となりました。<br />
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5年前、私は戦争学を学ぶために大学院留学しました。その時はいつか日本が現実的な安全保障政策を持ち、多国間協調で国際平和により一層貢献するようになる日が来るだろうと思い、その日のために国際情勢を理解し安全保障に精通することが肝要だと考えていました。</div>
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4年前の秋、修士課程を終え論文を提出し終え、外務省から留学していたコースメイトとウクライナ、トルコ、ブルガリアの3か国を卒業旅行していたとき、イスタンブールからソフィアに向かう列車の客室内で、彼と日本のこれから、外交や安全保障について議論しました。その中には集団的自衛権も含まれていて、「首相の政治的決断で解釈を変更してやれるのだから、やるべきだ」という旨熱く語っていた覚えがあります。</div>
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正直なところ、かくも早く集団的自衛権の行使が可能になるとは予想していませんでした。英国で修行している時には10年以上かかるものと覚悟していました。数年前の自分であればもっと高揚していたのではないかと思いますが、今日という日を迎えてもこみ上げるものがないです。理由は色々考えられるのですが、最も大きいのはここが終着点ではないということでしょうか。</div>
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この数か月の議論の在り方は予想していたとおりで噛み合わず、少しでも政策論、安全保障の実りある議論が深まればよいという淡い望みは望みのままでした。戦後70年間にわたって軍事を忌避し放擲してきた日本の社会にあって、安全保障を正面から議論する知的基盤が存在せず、加えて安全保障への関心は経済や社会保障といった身近な問題と比較して圧倒的に低いことから、広範な理解を得るのが難しいのはやむを得ないものと認識しています。一方で、安全保障の世界にいる者として、様々なケースや欧米の研究などを紹介して少しでも参考にしてもらうという努力をしてこなかったのは怠慢だと反省しています。</div>
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今回の政府憲法解釈の変更、提出された法案は率直に申し上げると中途半端で、不完全な形のものだったと思います。しかし、集団的自衛権を行使可能とすることは国際社会において責任ある国家として行動する大前提で、また個別的・集団的を問わず自衛権は国際法上当然認められる国家の権利でありかつ国内法の制約に反しないものという考えから、成立を支持します。</div>
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メディアでは今回の政策変更を「大転換」「転換点」と表現する向きが多いです。確かに法案を巡る政治闘争が熱を帯び、政治的にはとても象徴的な法案であったでしょう。しかし、集団的自衛権を巡る課題と議論は新しいものではなく、湾岸戦争のトラウマ、PKO協力法成立と自衛隊の海外派遣、周辺事態法の制定、9.11同時多発テロとその後のインド洋・イラク派遣と、過去20余年の積み上げの延長線上にあるものでした。また、政治的なインパクトと裏腹に、例えば武力行使との一体化は従来通り避けるなど、法案による変化は騒ぎの大きさに比べると穏健なものでした。ただ、小さくても一歩は一歩であり、非常に重みのあるものでしょう。</div>
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集団的自衛権が限定的に解禁されたのは一つの通過点です。今回、安保法制が整備されたからといって、日本の安全保障や地域の安定が完璧になるものではありませんから、これからも恒久的な平和がより恒久平和に近づくよう、不断の努力が求められているのだと思います。2法案の成立はゴールではなく、集団的自衛権の行使という選択肢が増えた日本政府・国民双方にとって、これからがより重い選択を迫られより重い責任を負うことになります。海外での任務が増える可能性が以前より高くなった今、日本の安全保障政策や自衛隊はよりスタンダード化する必要性があり、そのための様々な法律と能力の整備が求められます。</div>
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集団的自衛権が行使可能となることで、政府が主張するように日本の安全保障にも資するでしょうし、同盟の双務化で日米関係が強化されるでしょうが、それだけに留まらない可能性が拡がると考えています。米軍以外との協力の余地が拡大することで、他の友好国との安全保障協力が発展していくことが期待されますし、日米同盟とANZUSやNATOのネットワークとを統合していく向きが出てきても不思議ではないと思います。このほか、同盟の双務化は沖縄ほかの駐留米軍のイシューにも長期的に影響を及ぼすのではないかと考えています。(詳しくは割愛します)</div>
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個人的には、将来スレブレニツァやダルフール、アレッポ、ホムスで起きたことを未然に防ぐ機会があるとき、日本が傍観せず行動できる国際コミュニティの一員であってほしいと強く願っています。22万人以上が死亡し、400万人以上が国外へ逃れて難民となったシリアを見れば、やや理想主義が強いことは否定できませんが。今の首相や政府の方針とは異にしますが、国際協調のもとで保護する責任(responsibility to protect)を果たし、人道的介入を行えるようにするのが積極的平和主義の一つの形であり、そのために集団的自衛権が不可欠だと愚考します。日本のケーパビリティーとキャパシティを踏まえた上で、可能な範囲で惨禍の拡大を食い止めることができれば、紛争の犠牲者を少なくすることができます。</div>
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いずれにしても安保法制は数多くある通過点の一つであり、ここがはじまりです。日本をしてforce for goodとする。この国の舵取りを過たすことなく、少しでも安全で少しでも良い世界にしていく。及ばずながら、私個人としてもその為にできることをしていく所存です。</div>
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DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-23950924559899609322015-08-19T22:30:00.000+09:002015-08-20T07:26:54.857+09:00約1か月ぶりに安保法制をフォローする~PKO協力法編 1か月以上間が空いてしまいましたが、今日から再開です。<br />
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ちょうど国会審議で、駆けつけ警護に関する統合幕僚監部の内部資料が話題となっていますが、今日は国際平和協力法(PKO協力法)の改正についてフォローしていきたいと思います。</div>
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PKO協力法の改正では、PKOに参加する自衛隊が実施できる業務の拡大と、非国連型(国連が統括しない)「国際連携平和安全活動」の新設の2つが大きな柱です。</div>
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PKO業務は、従来、停戦監視や被災者支援を行ってきましたが、これに加えて安全確保、そして「駆けつけ警護」が業務に加えられることになります。</div>
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「駆けつけ警護」について簡単に説明しますと、他国軍部隊や住民、NGO等民間人に対する武力攻撃が発生した際に、自衛隊が救援に当たるというものです。</div>
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この「駆けつけ警護」や安全確保業務を可能とするにあたって武器使用基準で「任務遂行のための武器使用」を認めることとなります。<br />
<br />
これまでは「自己保存型」、つまり部隊・隊員の自衛に際してのみ武器使用が認められていましたが、救援という任務のための武器使用、場合によっては襲撃している武装勢力等に対する発砲等が可能となります。<br />
<br />
日本のPKO参加5原則(後述)では紛争当事者間の停戦合意がPKO参加の前提となっており、自衛隊や他国軍が派遣されるのは現に戦闘が発生していない地域ですが、政情の急変、紛争の再燃という緊急事態が発生した場合、自己保存はもちろんですが、紛争で危害が及びかねない住民等の保護が求められる場合があります。<br />
<br />
次に「国際連携平和活動」です。PKO、平和維持活動はその多くが国連の統括の下に実施されていますが、国連以外の主体、例えば地域機構が、平和維持活動を実施しているケースがあります。<br />
<br />
具体的にはソマリアでアフリカ連合(AU)が行っている「ソマリア平和維持活動(AMISOM)」が挙げられます。また、現在では国連PKOに移行していますが、西アフリカのマリ北部を過激派武装勢力が勢力を拡大した当初は、ナイジェリア等西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)によって編成されたアフリカ主導の軍事ミッション(AFISMA)が展開して事態に対応しました。<br />
<br />
このように、国連以外の枠組みでの平和維持活動、国際連携活動が行われるようになっており、それに日本も参加できるようにするというのが法改正のもう1つの目的です。<br />
<br />
ただし、なんでも「国際連携平和活動」ということで自衛隊を派遣できるわけでは、当然ありません。<br />
<br />
先ず、日本にはPKO参加5原則があります。<br />
<br />
① 紛争当事者の間で停戦の合意が成立している<br />
② 国連平和維持隊が活動する地域の属する国及び紛争当事者による我が国の参加への同意<br />
③ 国連平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的な立場<br />
④ 上記原則が満たされない状況が生じた場合、我が国の部隊が撤収できる<br />
⑤ 武器使用は要員の生命等の防護のための必要最小限のものを基本とする<br />
<br />
これに加えて、「国際連携平和活動」参加のための要件が設けられています。<br />
<br />
簡単に並べると国連の決議、国連機関もしくはEU等地域機構の要請、そして平和維持活動が行われる国の要請がありかつ国連主要機関の支持があることです。<br />
<br />
PKO、またはこれに類する平和維持活動そのものは、「国際平和協力」であり国家として自衛権発動には当たらないですし、国連PKOはもちろんのこと、「国際連携平和活動」も国連決議等、国際法上合法、禁止されている戦争にはあたらないと理解されます。<br />
<br />
我が国においては派遣された自衛隊部隊が部隊・要員の自衛(正当防衛・緊急避難)においてこれまで武器使用を認めてきましたが、今後は業務の拡大に伴い、活動地域の治安が悪化した際にも武器使用が求められ、認められるケースが出てきます。<br />
<br />
国家としての集団的自衛権の発動(密接な関係にある国Aが攻撃を受けた場合に日本が共同対処する)ではありませんが、部隊レベルの集団的自衛権の発動(他国軍、住民、国連職員、NGO等民間人が危機にある際に派遣部隊が対処する)と言えるでしょう。<br />
<br />
PKO協力法関係は以上です。次ですが、「重要影響事態」に関する2つの法律、周辺事態安全確保法改め「重要影響事態安全確保法」と「船舶検査活動法」改正について見ていきます。<br />
<br />
<br />
<br /></div>
DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-86854281598642105182015-07-20T19:30:00.000+09:002015-07-20T19:30:01.587+09:00平和安全法制整備法で改正される法律を今更ながら見ていく~自衛隊法編平和安全法制整備法と国際平和支援法は衆議院を通過し、参議院に送られましたが、10本の法律をまとめて改正する(+附則によりさらに10本の関連法の技術的な改正を行う)前者は複雑です。<br />
<br />
なので1本1本、今回の法改正で何がどう変わるのかを見ていきたいと思います。<br />
<br />
本日は「自衛隊の任務、自衛隊の部隊の組織及び編成、自衛隊の行動及び権限、隊員の身分取扱等を定める」(隊法1条)、自衛隊法の改正について見ていきます。<br />
<br />
今回の主な改正事項は<br />
<br />
① 在外邦人等の保護措置 (新設、第84条の3、第94条の5)<br />
② 米軍等の部隊の武器等の防護 (新設、第95条の2)<br />
③ 平時における米軍に対する物品役務の提供の拡充 (第100条の6)<br />
④ 国外犯処罰規定の整備 (第122条の2)<br />
<br />
です。これらは概ね集団的自衛権とは関係ない項目です。<br />
<br />
集団的自衛権(存立危機事態)に関係する部分は後述します。<br />
<br />
①「在外邦人等の保護措置」は<br />
<br />
1)外国における緊急事態発生時に、<br />
2)当該外国の当局が治安維持にあたっており、かつ、戦闘行為の可能性がない場合<br />
3)当該外国の同意を得て、<br />
4)邦人等の警護、救出、輸送その他の措置を自衛隊ができるようになります。<br />
<br />
武器使用については正当防衛・緊急避難の場合に許容されます。<br />
<br />
これは集団的自衛権の行使とは直接関係ない事項ですね。おそらくは中東や北アフリカ(アルジェリアやチュニジア)で相次いだ過激派組織による邦人テロ被害を受けて議論してきたものを、今回の法改正に盛り込んだのだと思います。<br />
<br />
②「米軍等の部隊の武器等の防護」は、<br />
<br />
1)共同訓練をはじめとする自衛隊と連携して日本の防衛に資する活動(現に戦闘行為が発生している現場で行われるものを除く)をしている米軍やほかの国の軍隊の武器等を、<br />
2)米軍やその他の軍隊から要請があり、<br />
3)防衛大臣が必要と認めた時に、<br />
4)自衛隊が防護でき、<br />
5)正当防衛・緊急避難に当てはまる場合には武器の使用も認められます。<br />
<br />
表現がややこしいですが、1)の「自衛隊と連携して日本の防衛に資する活動(現に戦闘行為が発生している現場で行われるものを除く)」と5)の武器使用権限から、これも集団的自衛権の行使と関係ないものと判断されます。<br />
<br />
<br />
③「平時における米軍に対する物品役務の提供の拡充」は、簡単に言えば「自衛隊の部隊と一緒の現場で活動する」米軍を新たに対象とします。具体的には次のシチュエーションで一緒に行動する米軍部隊が支援対象に追加されます。<br />
<br />
1) 自衛隊施設や駐留米軍施設に対する破壊(テロ)のおそれがあるときの警護出動<br />
2) 海賊対処行動<br />
3) 弾道ミサイル破壊措置をとるために必要な行動<br />
4) 機雷ほか爆発性の危険物の除去処理<br />
5) 在外邦人等の保護措置<br />
6) 船舶または航空機による情報収集・偵察活動<br />
<br />
また、これらの活動に際して弾薬の提供が可能になります。そのほか、米軍施設に一時的に滞在する自衛隊と一緒にいる米軍が、自衛隊施設に一時的に滞在している米軍と同様に物品役務提供の対象となります。<br />
<br />
ここで言う物品・役務ですが、「(武器をのぞく)補給、輸送、修理及び整備、医療、通信、空港及び港湾業務、基地業務、宿泊、保管、施設の利用、訓練業務、建設」を指します。<br />
<div>
<br /></div>
<br />
④「国外犯処罰規定の整備」では、<br />
<br />
1) 上官の職務上の命令に対する多数共同しての反抗および部隊の不法指揮<br />
2) 防衛出動命令を受けたものによる上官命令反抗・不服従等<br />
<br />
が、日本国外においても国内同様罰せられるようになります。既存の条文の適用拡大です。<br />
<br />
長くなりましたが最後に「存立危機事態」、本筋である集団的自衛権の行使に関係する改正です。<br />
<br />
第76条の2が新設され、存立危機事態(我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態)にも、日本に対する武力攻撃が発生した際、すなはち個別的自衛権を行使する場合と同じく、「防衛出動」ができるようにするものです。<br />
<br />
防衛出動にあたっては、「原則、事前の国会承認が必要」となります。例外として緊急で事前承認を得る余裕がない場合は事後承認となっていますが、これは従来の個別的自衛権に基づく防衛出動と同じ扱いです。<br />
<br />
さて、ここまで自衛隊法の改正案について大まかに見てきましたが、集団的自衛権と関係しない項目もあり、要領を得ないところが多いと思います。<br />
<br />
実はこれ以外にも、存立危機事態、重要影響事態に関係する事態対処法制や、PKO協力法の改正、国際平和支援法の新設を受けて条文が追加されたり変更されている箇所があり、そちらも参照しないと全貌を把握できないものとなっています。<br />
<br />
(なので、最初に基本である自衛隊法改正を取り上げましたが、他の法律の改正について巡った後、もう1度カバーいたします)<br />
<br />
最初に「複雑です」と記しましたが、これを広く国民に理解してもらうというのは極めて困難な作業です。<br />
<br />
次回は国際平和協力法(PKO協力法)の改正箇所を見ていきます。<br />
<br />
<br />
<br />DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-29151118981618382922015-07-15T16:30:00.001+09:002015-07-15T16:44:25.971+09:00政府の憲法解釈の歴史を今更ながら復習する(冷戦終結から現在まで)山岡「この集団的自衛権は出来損ないだ。食べられないよ」<br />
<br />
前編の流れをざっとまとめます。<br />
<br />
<br />
① 日本国憲法審議過程 「自衛権(の発動としての戦争)も認められない」by吉田茂<br />
② 朝鮮戦争勃発時 「集団的自衛権は国家固有の権利(共同行使説)」<br />
「集団的自衛権の国外での行使は認められない」<br />
③ 1960年 「日本防衛のための米軍との共同対処は個別的自衛権」<br />
④ 1964年 「他国防衛のための集団的自衛権の行使は認められない」<br />
⑤ 1981年 「集団的自衛権を有しているのは当然だが、行使は認められない」<br />
<br />
<br />
ベルリンの壁が崩壊しソ連が解体され、国際情勢が大きく変化した90年代の新たな世界で、日本では国連活動(多国籍軍)への協力という文脈で自衛隊の海外派遣が議論の対象となります。<br />
<br />
1991年の湾岸戦争への対応が大きな問題になったことは言うまでもないでしょう。総額135億ドルの資金援助を実施したがクウェート政府からの感謝決議に日本が入っていなかったことが問題となりました。<br />
<br />
90年代前半は多国籍軍へのアプローチと、PKO活動への参加の是非が大きなイシューとなりました。<br />
<br />
先ず「国連軍」への対応として、(1)国連軍の指揮下に入る「参加」は、武力行使を伴うのであれば憲法上認められない (2) 国連軍の組織の外で行う各種支援を含む「協力」は、武力行使と一体化しなければ認められる。という統一見解が示されます。<br />
<br />
「参加」と「協力」を分けた上で、後者は容認するという見解です。<br />
<br />
PKOについては1992年に「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(PKO協力法」が成立します。2001年には、現在の内閣官房国家安全保障局長である谷内正太郎氏が、国会でPKOと集団的自衛権に関してつぎのように答弁しています。<br />
<br />
<blockquote class="tr_bq">
「PKOは、国連が世界各地における地域紛争の平和的解決を助けるための手段として、実際の慣行を通じて確立してきた一連の活動であり、基本的に中立非強制の立場で行われるものであるから、このようなPKOへの参加は集団的自衛権の行使に当たらない」</blockquote>
<br />
また「武力行使との一体化」について、大森内閣法制局長官(当時)が96年に次の4つの判断基準を挙げています。<br />
<br />
①戦闘行動の拠点と当該行動の場所との地理的関係<br />
②当該行為の具体的内容<br />
③各国軍隊の武力行使の任にある者との関係の密接性<br />
④協力しようとする相手方の活動の現況等<br />
<br />
<br />
すはわち、個別具体的なケースを見て判断すべきという方針です。<br />
<br />
橋本、小渕内閣では、例えば後方支援としての米軍への武器弾薬の輸送は集団的自衛権の行使にあたらないという見解が示されました。<br />
<br />
この「武力行使との一体化」の回避による活動範囲の拡大は、00年代の同時多発テロ以降のテロ対策特措法、イラク特措法における「非戦闘地域」という概念に繋がっていきます。<br />
<br />
00年代、小泉政権とそれに続く第一次安倍政権では、「テロとの戦い」と、米国とのミサイル防衛(MD)の構築を背景に、集団的自衛権についての研究が行われます。<br />
<br />
<blockquote class="tr_bq">
「憲法に関する問題について、世の中の変化も踏まえつつ、幅広い議論が行われることは重要であり、集団的自衛権の問題について、様々な角度から研究してもいいのではないかと考えている。」(第 151 回国会衆議院土井たか子議員提 出の質問主意書に対する答弁書[内閣衆質 151 第 58 号] 平成 13 年 5 月 9 日)</blockquote>
<blockquote class="tr_bq">
<br />
<br />
「大量破壊兵器やミサイルの拡散、テロとの闘いといった国際情勢の変化や、武器技術の進歩、我が国の国際貢献に対する期待の高まりなどを踏まえ、日米同盟がより効果的に機能し、平和が維持されるようにするため、いかなる場合が憲法で禁止されている集団的自衛権の行使に該当するのか、個別具体的な例に即し、よく研究してまいる」(安倍晋三首相の発言。第 165 回国会衆議院会議録第 3 号 平成 18 年 9 月 29 日)</blockquote>
<br />
このうち、ミサイル防衛について政府は2005年に自衛隊法を改正し、同法82条の3で迎撃手続きについて定めていますが、 同措置は<br />
<blockquote class="tr_bq">
「自衛隊法上の任務として公共の秩序の維持に該当し、
あえて整理すれば、警察権の行使に相当するものと言ってよい」(大野功統防衛庁長官の発言。第
162 回国会衆議院会議録第 16 号 平成 17年4月1日)</blockquote>
と警察権の行使とし、集団的自衛権の範囲外に置くことでクリアしています。<br />
<br />
2度の政権交代を経験した後、第2次安倍政権において再開された「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(通称、安保法制懇)が、2014年5月15日に報告書を提出します。(ちょうどこの1年後に「平和安全法制整備法」と「国際平和支援法」が国会に提出されます)<br />
<br />
安保法制懇の集団的自衛権に関する解釈についての提言は次のとおりです。<br />
<br />
<blockquote class="tr_bq">
<br />
<br />
「憲法第9条第1項の規定(「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」)は、我が国が当事国である国際紛争の解決のために武力による威嚇又は武力の行使を行うことを禁止したものと解すべきであり、自衛のための武力の行使は禁じられておらず、また国連PKO等や集団安全保障措置への参加といった国際法上合法的な活動への憲法上の制約はないと解すべきである」<br />
<br />
<br />
<br />
「憲法第9条第2項は、第1項において、武力による威嚇や武力の行使を「国際紛争を解決する手段」として放棄すると定めたことを受け、「前項の目的を達するため」に戦力を保持しないと定めたものである。したがって、我が国が当事国である国際紛争を解決するための武力による威嚇や武力の行使に用いる戦力の保持は禁止されているが、 それ以外の、すなわち、個別的又は集団的を問わず自衛のための実力の保持やいわゆる 国際貢献のための実力の保持は禁止されていないと解すべきである」</blockquote>
これを踏まえて2014年7月1日に臨時閣議で決定された解釈が以下のとおりです。<br />
<br />
<blockquote class="tr_bq">
「憲法第9条が,我が国が自国の平和と安全を維持し,その存立を全うするために必要な自衛の措置を採ることを禁じているとは到底解されない。一方,この自衛の措置は,あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命,自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫,不正の事態に対処し,国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置として初めて容認されるものであり,そのための必要最小限度の「武力の行使」は許容される。これが,憲法第9条の下で例外的に許容される「武力の行使」について,従来から政府が一貫して表明してきた見解の根幹,いわば基本的な論理であり,昭和47年10月14日に参議院決算委員会に対し政府から提出された資料「集団的自衛権と憲法との関係」に明確に示されているところである。
この基本的な論理は,憲法第9条の下では今後とも維持されなければならない」</blockquote>
<br />
<blockquote class="tr_bq">
「我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず,我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し,これにより<b>我が国の存立が脅かされ,国民の生命,
自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において</b>,これを排除し,我が国の存立を全うし,国民を守るために他に適当な手段がないときに,
<b>必要最小限度</b>の実力を行使することは,従来の政府見解の基本的な論理に基づく自衛のための措置として,憲法上許容されると考えるべきである」</blockquote>
<br />
<blockquote class="tr_bq">
「憲法上許容される上記の「武力の行使」は,国際法上は,集団的自衛権が根拠となる場合がある。この「武力の行使」には,他国に対する武力攻撃が発生した場合を契機とするものが含まれるが,憲法上は,<b>あくまでも我が国の存立を全うし,国民を守るため,すなわち,我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置</b>として初めて許容されるものである」</blockquote>
<br />
<br />
いやはや長かったです。最初のと比較すると<br />
<br />
「集団的自衛権の国外での行使は認められない」→要件を充たせば国外でも可。<br />
「他国防衛のための集団的自衛権の行使は認められない」→基本的に変わらず。<br />
「集団的自衛権を有しているのは当然だが、行使は認められない」→行使は限定的に認められる。<br />
<br />
という変化でしょうか。<br />
<br />
「自国と密接な関係にある外国に対する攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力を以て阻止する権利」を、「存立が脅かされ(中略)明白な危険がある場合において」行使できるというものです。<br />
<br />
<br />
さて解釈の変遷をフォローし終えましたが、次回以降は、平和安全法制整備法案で、具体的に自衛隊法以下がどのように改正されるかを追っていこうと考えています。<br />
<br />
<br />DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-5693287987217994082015-07-13T23:35:00.000+09:002015-07-13T23:39:01.604+09:00政府の憲法解釈の歴史を今更ながら復習する(憲法制定から冷戦終盤まで)本日は衆議院で「安保法制」の中央公聴会が実施され、衆議院で「平和安全法制整備法案」および「国際平和支援法案」の採決が迫ってきています。<br />
<br />
今回は戦後の政権における、集団的自衛権の解釈についてフォローしていきます。<br />
<br />
2014年7月の政府の憲法解釈変更以来、各方面で取り上げられてきたことから既にご存知の方もいるでしょうが、現行憲法の審議過程、1946年6月26日の段階で、当時の吉田茂首相は「自衛権」について以下のように答弁しています。<br />
<br />
<blockquote class="tr_bq">
「戦争抛棄に関する本案の規定は、直接には自衛権を否定はして居りませぬが、第9条第2項に於て一切の 軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争も、また交戦権も抛棄したものであります。 従来近年の戦争は多く自衛権の名に於て戦われたのであります。満州事変然り、大東亜戦争然りであります」 (第90回帝国議会衆議院帝国憲法改正案特別委員会)</blockquote>
<br />
憲法を制定する前の審議段階での答弁、もっと言えばサンフランシスコ平和条約で再独立を果たす前の占領下における見解ということで、あくまで参考ですが、「個別的自衛権」も否定しています。<br />
<br />
<br />
翌1947年5月3日に日本国憲法が施行され、それから約3年後、吉田茂は1950年2月3日、第7回国会において「国際連合憲章第51条で集団自衛権が認められているけど、総理は集団的自衛権を認めますか?」という質問に対し、<br />
<br />
「当局者と しては、集団的自衛権の実際的な形を見た上で なければお答えできない」<br />
<br />
と述べています。やはり主権回復以前なので参考程度です。ちなみに質問者は大勲位こと中曽根康弘議員(当時)でした。<br />
<br />
<br />
集団的自衛権について、政府としてはじめて公の解釈を示したのは朝鮮戦争勃発、再独立と時代が目まぐるしく動いていた1951年です。<br />
<br />
当時の外務省条約局長の答弁では、(1)集団的自衛権が国家固有の権利であること (2)集団的自衛権は一国の武力行使に各国が個別的自衛権を共同して発動するもの と捉えられていました。<br />
<br />
<br />
ちなみに(2)は「個別的自衛権共同行使説」で、現在の公定解釈の「合理的拡大説」とは異なっていました。<br />
<br />
1951年11月、「集団的自衛権は保有している」ことが明示されるとともに、9条2項を根拠に国外での行使が否定されました。当時は朝鮮戦争の真っ最中、念頭にあったのは朝鮮半島に海外派遣することを米国に要請される事態でした。<br />
<br />
<br />
しばらく専ら「海外派兵」の文脈で集団的自衛権が議論されることが続きます。<br />
<br />
1959年3月に、当時の林内閣法制局長官が「外国の領土に、 外国を援助するために武力行使を行うというこ と」は憲法で認められた自衛権の範囲外と答弁します。翌60年には日本を守るためにアメリカと共同対処するのは「個別的自衛権」だと明確にします。<br />
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同年12月、現在の議論でもたびたび援用される<a href="http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55816">砂川事件の最高裁差し戻し判決</a>が出されます。</div>
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<blockquote class="tr_bq">
「九条一項においては 「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」することを宣言し、 また「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決 する手段としては、永久にこれを放棄する」と規定し、さらに同条二項においては、 「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦 権は、これを認めない」と規定した。かくのごとく、同条は、同条にいわゆる戦争 を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているのであるが、<b>しかしもちろんこれによりわが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく、わが憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものではないのである</b>(中略)わが国が、<b>自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない</b>(略)。すなわち、 われら日本国民は、憲法九条二項により、同条項にいわゆる戦力は保持しないけれ ども、これによつて生ずるわが国の防衛力の不足は、これを憲法前文にいわゆる平 和を愛好する諸国民の公正と信義に信頼することによつて補ない、もつてわれらの安全と生存を保持しようと決意したのである。そしてそれは、必ずしも原判決のいうように、国際連合の機関である安全保障理事会等の執る軍事的安全措置等に限定されたものではなく、<u>わが国の平和と安全を維持するための安全保障であれば、その目的を達するにふさわしい方式又は手段である限り、国際情勢の実情に即応して適当と認められるものを選ぶことができることはもとよりであつて</u>、憲法九条は、わが国がその平和と安全を維持するために他国に安全保障を求めることを、何ら禁ずるものではないのである」</blockquote>
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国家固有の「自衛権」についてはこれでクリアです。問題は「集団的」が含まれるかですが、この点は明示されていません。</div>
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時はさらに進みベトナム戦争の頃、「我が国が他国の安全のために兵力を派出してそれを守るとい うことは憲法第9条のもとには許されないだろうという趣旨で、集団的自衛権は憲法第9条で認めていないだろうというのが我々の考え方」と、他国防衛を否定する考えが定着します。</div>
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1981年の政府見解で、集団的自衛権の明確な定義(下線部)と、「保有はしているが行使はできない」という解釈が示されます。</div>
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<blockquote class="tr_bq">
「国際法上、国家は集団的自衛権、すはわち、<b>自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利</b>を有しているものとされている。<b>我が国が、国際法上、このような集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上、当然であるが</b>、憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、<b>集団的自衛権を行使することは</b>、その範囲を超えるものであって、<b>憲法上許されないと考えている</b>」(第94回国会衆議院稲葉誠一郎議員提出の質問主意書に対する答弁書 昭和56年5月29日)</blockquote>
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朝鮮戦争、日米安保条約、ベトナム戦争といった節目ごとに議論がなされ、解釈が変遷を遂げてきました。国際的に米ソ冷戦期、国内では55年体制下で野党社会党が自衛隊を違憲、日米安保を破棄すべしとする勢力であった、そういう背景で政府解釈が示されてきたのですね。</div>
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長くなったので今回はここまでです。冷戦終焉後、自衛隊のPKOやらイラク戦争やらで、従来の日米だけでない、多国間の枠組みを見据えた議論が進んだ過去20余年については、次回以降取り上げます。</div>
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DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-9747079629078620892015-07-11T00:10:00.000+09:002015-07-11T00:11:31.959+09:00集団的自衛権を今更ながらおさらいする前回に続いて「安保法制」についてフォローしていきます。法案について掘り下げていく前に、今回の法改正・立法の中心にある集団的自衛権についてやります。<br />
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国会の審議を通じて、「集団的自衛権」の「行使」を可能とする「解釈」が合憲か違憲かで、大きな論争が起きましたが、そもそも「(集団的)自衛権」とは何かという話をしたいと思います。</div>
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他国に対して武力を行使することは、国際法上許されていないですが、「自衛」、他国の侵略行為や攻撃を撃退し、自国を守る範囲においては認められています。</div>
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個人のレベルで言えば、人を殴るのは普通は犯罪ですが、暴漢に襲われた場合に身を守るため・抵抗する上では殴ったり蹴ったりしても「正当防衛」が認められます。</div>
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この自衛権に関して、日本国憲法に規定はありません。他国でも憲法に明記しているところはそう多くないと聞きますが、国家の「自然権」としてこれを認めていますし、国際法上では国連憲章第51条で明文化されています。</div>
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日本もまた自衛権を保有しています。ここでポイントなのは、政府解釈では「個別的自衛権」も「集団的自衛権」も、「保有している」ということです。</div>
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そして「個別的自衛権」は行使もできるが、「集団的自衛権」は行使はできないというのが従来の政府解釈でした。これを昨年7月に安倍政権が「一部できる」という解釈に変更しました。</div>
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次に「個別的自衛権」と「集団的自衛権」について見ていきましょう。</div>
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自衛権が個別的・集団的に区別されるようになったのは、先の大戦後、南米諸国の働きかけを受けて国連憲章に明記されたのがはじまりです。(その詳細な経緯は<a href="http://www.riabou.net/entry/2014/08/26/225027">こちらのブログ</a>に詳しいです)比較的新しく、しかも国際秩序形成を主導してきた欧米によるものではないというのが一つのキーですね。<br />
<br />
国連憲章51条の前半(<a href="http://www.un.org/en/documents/charter/chapter7.shtml">原文</a>)を見てみましょう。<br />
<br />
<blockquote class="tr_bq">
Noting in present Charter shall impair the inherent right of individual or collective self-defence if an armed attack occurs against a Member of the United Nations, <b>until the Security Council has taken measure necessary to maintain international peace and security</b>. </blockquote>
<br />
個別的・集団的を問わず、「国連安全保障理事会が国際平和と安全を保つために必要な措置を講じるまで」の、窮余の策、つなぎとして認められています。<br />
<br />
「個別的」については説明は特に要らないでしょう。危害を加えられた・加えられそうになったら身を守る、そうしなければ侵略され占領され国家が亡くなってしまいます。<br />
<br />
交戦権、国際紛争を解決するための戦力を放棄した日本でも、個別的自衛権は否定できません。日本がなくなれば、憲法も存在し得ないですしね。<br />
<br />
さて、問題は「集団的」です。日本は攻撃を受けていないがアメリカが攻撃を受けた、という場合です。日本は違法な侵害を受けていないので、武力を行使しなくても無事です。(ここでは同盟や抑止については触れません)<br />
<br />
日本政府は「自国と密接な関係にある他国に対する攻撃を、<b>自国の攻撃とみなし、自国の権利が侵害されたとして</b>、他国を守るために防衛行動をとる権利」を「集団的自衛権」としています。ちなみにこの考え方を個別的自衛権合理的拡大説といいます。<br />
<br />
個々人のレベルに置き換えると難しい話ではありません。自分以外、家族や友人は言うまでもなく、他人でも強盗・凶漢に襲われているところを武力を行使して助けるのは「正当防衛」であり罰されません。<br />
<br />
これを日本という国家で見ると話はややこしくなります。日本は「武力を行使できない」としています。(繰り返しになりますが、日本が滅亡すれば憲法も何も意味を成さないので、個別的自衛権については保有もしているし行使もできるとしています)<br />
<br />
国際法で国家として認められた権利がある一方、日本は自らに制約を課しているという状況です。前述のとおり、「自衛権」についての明文化された既定はありません。ゆえに、「個別的」「集団的」自衛権については他の条文から導き出された「解釈」があるのみです。<br />
<br />
ここまで集団的自衛権の実態を簡単におさらいしました。<br />
<br />
次回はその「解釈」について、これまでの流れを辿っていきたいと思います。<br />
<br /></div>
DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-20942401130743999952015-07-08T22:00:00.000+09:002015-07-08T22:00:00.741+09:00安全保障関連法制を今更ながらフォローしていくさて、今国会は言うまでもなく、戦後日本で最も論争を呼んでいる法案の1つである安全保障関連法案が7月15日から16日に採決にかけられ、衆議院を通過する運びとなりました。<br />
<br />
この「安保法制」、反対派が「戦争法案」と呼ぶもの、各種世論調査の結果を見ると、依然として多くの人々にとってよくわからないものであるとのことです。<br />
<br />
そこで既に80時間以上国会で審議され、新聞はじめマスメディアからオンラインメディアまで数多の記事で取り上げられながら、理解不十分の安保法制について、一からおさらいしていきたいと思います。<br />
<br />
先ずは国会に提出されている法案の名前から。<br />
<br />
第189回通常国会に提出され、現在審議されている法案は2つです。<br />
<br />
1.平和安全法制整備法(我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案)<br />
<br />
2.国際平和支援法(国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案)<br />
<br />
前者はその名の通り整備法で、既に存在する10の法律を改正するものです。(以下参照)<br />
<br />
1) 自衛隊法<br />
2) 国際平和協力法 (PKO協力法)<br />
3) 周辺事態安全確保法<br />
4) 船舶検査活動法<br />
5) 事態対処法<br />
6) 米軍行動関連措置法<br />
7) 特定公共施設利用法<br />
8) 海上輸送規正法<br />
9) 捕虜取扱い法<br />
10) 国家安全保障設置法<br />
<br />
この整備法1つを理解するにも上記の法律をそれぞれ理解していなければいけないので複雑です(関連する法律のどこをどう改正するのかについては、次回以降に個別に見ていければと思います)。<br />
<br />
後者は新しい法律で、国連決議(総会or安全保障理事会)があることを前提に、国会の事前承認を得て諸外国の軍隊を協力支援(武器弾薬の供与はしない)することを可能とする法律です。<br />
<br />
平和安全法制整備法、国際平和支援法はともに内閣官房国家安全保障局(NSS)が担当部局です。2014年1月の発足以降、同局が担当する初の法案(のはず)です。<br />
<br />
既にご承知のとおり、2014年7月1日に安倍政権が閣議決定した憲法の政府解釈の変更を反映し、政府として従来は「保有しているが行使は認められない」としてきた集団的自衛権の行使を部分的に解禁する法改正・立法です。<br />
<br />
以上がいわゆる「安保法制」の基礎的情報となります。<br />
<br />
これからゆっくりじっくり、2つの法案と政府の安全保障政策の変更について、1つ1つ丹念にフォローしていこうと思います。DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-3534361142564251072015-04-29T23:50:00.002+09:002015-04-29T23:50:38.362+09:00バンドン、キャピトルヒル、そして談話へ 訪米中の安倍首相がまもなく米議会上下院の合同会議で演説をする。先のバンドン演説から、来るべき戦後70周年の安倍ステートメントへと流れる大事なスピーチである。その内容、文言は日米両国のメディアから厳しく論評されるだろう。<br />
<br />
付き纏う歴史認識への懸念を払しょくできるかを日米のメディアは注視しているが、それは適切な問いではない。首相がもっとも問われるべきは、70年前の終戦前の過去から現在、そして現在からこれから10年20年先の未来へとつながる「歴史」をどう象るかだろう。<br />
<br />
そこに必要なのは過去だけを見た「お詫び」ではない、「痛切な反省」ではない。それを踏まえて日本が戦後の70年どう歩み、そしてこの先どのように振る舞うかである。それは単なる「未来志向」でもない。結局のところ、過去を見ずして未来を描くことはできないし、過去ばかり見ていてもありたい未来のことには考えが至らない。<br />
<br />
この演説は初めて上下両院の合同会議で日本の首相が演説をするということで歴史的であるし、戦後70年の一つの節目で、不安定な世界で日米同盟が防衛ガイドライン改訂を経て次なるステップへと進む、重要なタイミングで行われる。<br />
<br />
先のインドネシア・バンドンでのアジアアフリカ会議における演説では、過去の村山政権、小泉政権が使った文言に触れなかったことがフォーカスされたが、この米議会演説でも同様に直接表現を踏襲する必要はおそらくない。<br />
<br />
最も旧帝国時代について踏み込んだ発言・表現をするとしたら、それはやはり談話をおいてほかにはないだろう。アジアアフリカ会議は植民地時代からの脱却という(当時の)未来に向いた性質を成り立ちにおいて帯びていたし、米国は先の大戦で戦った敵であったが、今直面する「歴史問題」の当事者でもないし道徳的指導的立場にある存在でもない。<br />
<br />
DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-64815764934272674072014-10-11T13:55:00.000+09:002014-10-11T13:55:46.954+09:00オバマのDo the stupid stuffオバマ大統領は経験者や専門家が語ったことに耳を傾ける必要がある。米国とフランスが「イスラム国(IS)」掃討に乗り出したとき、<a href="http://www.bbc.com/news/uk-29305840">トニー・ブレア前首相は「地上軍派遣の選択肢を排除すべきではない」と述べた</a>。<a href="http://www.washingtonpost.com/world/national-security/dempsey-raises-possibility-of-involving-us-combat-troops-in-fight-against-islamic-state/2014/09/16/8e13a742-3da1-11e4-b0ea-8141703bbf6f_story.html">デンプシー米統合参謀本部議長も議会の証言で地上軍の関与の可能性について言及した</a>。<br />
<br />
早くからオバマ政権の当局者が認めているように、エアパワー、空爆に依存した戦法では短期間に目に見える勝利を収めることはできない。国防総省のジョン・カービー報道官はシリア反体制派やイラク軍に地上での役割を期待する発言をしたが、両者はISを打倒するには明らかに力不足だ。<br />
<br />
私は自由主義的・人道的介入を支持するし、ISの過激主義とテロリズムを打倒しなければならないと考えるが、今オバマ政権と有志連合が実施しているイラク・シリアでの空爆介入には極めて否定的だ。ISの残虐行為と脅威に晒される市民を見て「何かをしなければならない」というのは間違いではない。しかしただ「何かをする」のは戦略ではない。<br />
<br />
改めてクラウゼヴィッツの言を借りるなら「戦争は別の手段による政治(政策)の継続」である。米国と有志連合の指導者は対IS戦の先の構想を持ち得ているのだろうか? 手段も目的も、軍事合理性も政治合理性も欠いたシリア空爆はまさにDo the stupid stuff、馬鹿をやることでありオバマが避けてきたことではないのか? それから、デイビッド・キャメロン英首相は野党のリーダーだった時を思い出すといい。「ミサイルと爆弾は最悪の大使」だ。<br />
<br />
今やっているのはただのcreeping interventionだ。ずるずると深みにはまり、長い戦争を強いられる。それがもたらすのは災禍だ。米情報機関の分析では、ISは米国にリーチしテロ攻撃を行うだけの能力は持っていない。米人ジャーナリストの斬首は野蛮で吐き気を催すものだが、この見通しのない戦争を始める切っ掛けとして相応しいものではなかったろう。<br />
<br />
<br />DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-24394205452452145912014-10-11T00:00:00.000+09:002014-10-11T00:13:15.131+09:00英仏を蝕むポピュリスト政党の台頭 労働党党首エド・ミリバンドは不人気だ。多くの有権者が彼を首相の器だと見なしていない。先に開かれた党大会では有権者の重要な関心事である財政赤字と移民問題についての言及を失念した(無謀にもノートなしで演説した結果だ)。エド・ミリバンドと影の蔵相エド・ボールのコンビはキャメロン・オズボーン相手に<a href="http://www.dailymail.co.uk/news/article-2756564/Tories-build-huge-lead-Labour-economy-fall-health-education.html">経済政策の信頼度</a>で大きく水を開けられている。<br />
<br />
それでも来年5月の総選挙で、エド・ミリバンドがダウニング街10番の住人となる可能性は日増しに高まっているように思える。キャメロン首相は彼を恐れてはいない。首相にとって最も脅威なのは彼の左からではなく右から来ている。英国独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージェと大陸欧州と移民が嫌いな、元々保守党を支持していた人々だ。<br />
<br />
そのUKIPは今日、歴史的な勝利を得た。補欠選挙で、保守党から鞍替えした元職候補が同党初のウェストミンスター議会の議席を確保したのだ。この予期されていた結果に、しかし保守党はさらなる混乱に陥ろうとしている。次は誰が保守党を捨ててUKIPに走るのか? 総選挙までUKIPが支持を拡大し続け、ファラージェと寝てミリバンドと目覚める投票者が続出するのか?<br />
<br />
一方、英仏海峡の向こう側では、稀に見る不人気と経済停滞に苦しむオランドの社会党政権を後目に、マリーヌ・ルペン率いる国民戦線(NF)の快進撃が止まらない。先の上院選挙では初めて議席を獲得した。UKIPとNFは共に5月の欧州議会選挙で躍進した勢いを失わず、各々国内政治でも無視できない存在となった。<br />
<br />
英仏両国の政界を揺るがす、両党の共通点は反EUと反移民、そして反エスタブリッシュメントだ。彼らの考えがポピュラーになりつつあることは注目そして憂慮すべきことだ。トラディショナルな政党・政治家から離れた人心が、親しみやすさの裏に満ち溢れた偏見に引き寄せられている。ファラージュは「ルーマニア人が隣に引っ越して来たら心配だね」と軽口を叩き、UKIPが女性からの支持を得られていないことについて「<a href="http://www.independent.co.uk/news/uk/politics/ukips-women-problem-nigel-farage-manages-to-come-across-as-sexist-even-while-admitting-his-party-looks-a-bit-blokeish-9781885.html">花でも売ればいい?</a>」とのたまう男だ。<br />
<br />
過去20年、ドミナントな政治の傾向は中道化、英米における「第3の道」路線の推進だった。センターグラウンドを確保し、両翼の支持層を得ることが正しい戦略だった。今起きている右からの揺さぶりが、これにとって代わるものとなるかもしれない。DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-59749503051446235672014-09-26T19:23:00.001+09:002014-10-02T00:11:10.267+09:00東アジアの安全保障と潜水艦英王立国防安全保障研究所(RUSI)が発行するNewsbriefで、南洋工科大学RSIS国防戦略研究所のMichael Raska研究員が東アジアにおける潜水艦の近代化(modernisation)について分析しています。一言で「潜水艦は東アジアでますます価値のある戦略的資産(strategic asset)になっているよ」とまとめることができます。<br />
<br />
冒頭で7月に韓国のType214潜水艦が進水したことに触れ、地域の各国にとって同型のようなディーゼル・エレクトリック方式通常動力潜水艦がトレンドとなっており、これが地域の戦略環境を反映しているとしています。<br />
<br />
例によって中国の列島線、A2/AD戦略、急増する軍事費をなぞった上で、かの国の潜水艦陣営を取り上げています。中国が現在保有しているのは6つの型(うち通常動力2タイプ、原子力4タイプ)計45隻と見積もられています。注目しているのが2004年から12隻配備しているとされる元級、同研究員は人民解放軍海軍(PLAN)が同型を20隻まで増やして、ロシア製艦艇やドイツから輸入したエンジンから選択的に技術を採用して云々するのではないかと見ています。<br />
<br />
<blockquote class="tr_bq">
The PLAN may introduce up to<br />twenty additional Yuan-class submarines<br />utilising other key technologies<br />selectively adapted from Russian boats<br />and imported German diesel-electric<br />engines. </blockquote>
中国は90年代半ばから、ロシアから多くて12隻のキロ級潜水艦を調達し、第4世代アムール級を少なくとも4隻購入するか検討していると報じられ、あるいは現在開発初期段階のカリーナ級にも関心があるとのこと。このような中国の潜水艦戦力増強に対し、日本や前述の韓国も対応し新造艦の調達を志向しています。<br />
<br />
東アジアだけではなく、東南アジアでも潜水艦は重要な存在で、こちらの<a href="http://thediplomat.com/2014/09/vietnams-china-challenge-making-asymmetric-deterrence-work/">The Diplomat</a>の記事では、ベトナムがロシアから購入したキロ級潜水艦で対中非対称戦略、対中抑止能力の向上を図っていることを取り上げています。5月に南シナ海のベトナム側のEEZ内で中国海洋石油総公司が石油掘削装置を設置したことで一悶着あったベトナムは、2009年にロシアからキロ級6隻を購入することを決定し、2016年末までに様になる抑止戦略を運用し得るようになるとのことです。<br />
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<br />DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-35968345530589012432014-09-21T21:30:00.000+09:002014-09-23T08:14:15.610+09:00対中海軍戦略と潜水艦カナダの友人が<a href="http://nationalinterest.org/feature/japan%E2%80%99s-south-asia-strategy-takes-shape-11302">先般の安倍首相南アジア訪問についてNational Interest誌に寄稿してました</a>ので、興味とお時間がある人はどうぞ。<br />
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中国が現在推し進めているA2/AD(Anti-Access, Area-Denial)や、これに対抗すべく米国が打ち出したAir Sea Battleについては多くの議論が為されておりますし、今更1から言うこともないでしょう。<br />
<br />
他方で、日本がどのように中国海軍の近代化とより野心的なその動きに対処していくのかということは、いくつかの提言がありますが、米海軍大学の<a href="http://nationalinterest.org/feature/us-submarines-run-silent-run-deepon-diesel-engines-11306?page=2">ジェームズ・ホームズ教授の論考</a>をやはりNI誌で読みましたので、これをたたき台に一つ取り上げてみます。</div>
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ちなみに、ホームズ教授は上記論考において、オーストラリアが現在のコリンズ級の後継候補として考えている「そうりゅう型潜水艦」について取り上げ、米海軍も原子力潜水艦(ヴァージニア級)にこだわらず、静かなディーゼル型の通常動力型潜水艦の取得も視野に入れるべきではないかと述べておられます。</div>
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誰もが指摘し否定できないところですが、西太平洋の海域において現在のトレンドで行くと、例えば2030年に想定されるところ、25隻~33隻のSSNs(+海自潜水艦22隻)で人民解放軍海軍(PLAN)の潜水艦70隻以上に対抗しなければならないという、数的不利が生じます。この47対70という数字も、戦力を全て集中できるという非現実的な前提に立っています。</div>
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この問題に対処する上で、米海軍はユニットコストが安くバジェット的にも受け入れられるし(単純計算でそうりゅう級5隻≒ヴァージニア級1隻)、日本のほか豪州ともプラットフォームを共有することで多国籍潜水艦部隊(a multinational East Asian submarine force)を組めたり、日本やグアムからだけでなく南からもオペレーショできるよと、そうりゅうのような通常動力型の優れた潜水艦をもっと組み込むのはどうだろうと述べておられるわけです。<br />
<br />
もちろん、米海軍の潜水艦艦隊、海軍全体、議会、防衛産業から圧倒的な抵抗があることは教授も認められるところですし、オーストラリアでも既に全部日本で製造することに雇用等への影響から反対意見が出ているのは報じられているところ、簡単にスイッチできるものとは考えておりません。<br />
<br />
さて大ざっぱにご紹介したところで本題ですが、日本が選択し得る戦術を考慮するにおいて、<a href="http://nationalinterest.org/feature/us-submarines-run-silent-run-deepon-diesel-engines-11306?page=2">2p</a>の「(日米同盟軍は)中国のアクセス拒否へにはアクセス拒否で返せ」というのがホームズ教授の基本的なラインとなります。<br />
<br />
第一列島線に沿って展開した潜水艦、水上艦、陸上ミサイル部隊、沿岸部からの航空戦力によって、中国側が列島線上に上陸拠点を確保することを阻止し、重要な水道から西太平洋へ抜けるのを妨げ、通行を危険にできるとしております。<br />
<br />
一言でまとめると、一種の相互確証海上覇権拒否(a kind of mutual assured sea denial)を成立させろという案です。<br />
<br />
潜水艦戦や、ここでは触れられていませんが機雷戦は、日本が単独でも地理的+質的優位を保持しており、見通し得る将来においても中国に後れを取ってはならない領域でしょう。<br />
<br />
10年後20年後を予測することはできませんが、中国経済が決定的な破局を迎えでもしない限り、かの国は海軍を含め軍事力の全面的な近代化・増強に多くのリソースを割いてくるでしょう。<br />
<br />
日本や米国が十分な投資を行わない場合、彼我の戦力差が縮まるのはもちろん、一部では質的に逆転される可能性は否定できないものです。<br />
<br />
絶対的な経済力・軍事力において日本が中国と張り合うのは基本的に難しいと見られるところ、相手方の弱い部分を的確に衝けるようにしておくことで、中国側の戦争のコストを引き上げることが求められます。<br />
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DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-62035492786849798312014-09-06T01:05:00.001+09:002014-09-06T01:05:09.312+09:00フェローっていいねって話 月曜に帰国して火曜から日常に戻りました。<br />
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今回のハワイ、それから今年3月にワシントンDCで行われた国際会議・フォーラムには所謂フェローの資格で参加しましたが、経験を踏まえて<span style="font-family: 'Helvetica Neue Light', HelveticaNeue-Light, helvetica, arial, sans-serif;">自分なりに「フェローシップのここが素晴らしい」と認識した点を書き出してみます。</span><br />
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<span style="font-family: Helvetica Neue Light, HelveticaNeue-Light, helvetica, arial, sans-serif;"><br /></span></div>
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<span style="font-family: Helvetica Neue Light, HelveticaNeue-Light, helvetica, arial, sans-serif;">① お金を出してもらえる。</span></div>
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<span style="font-family: Helvetica Neue Light, HelveticaNeue-Light, helvetica, arial, sans-serif;"> 院生・若手研究者にとって国際学会・ワークショップの類に参加するための費用を負担してもらえるのは大きい。航空券代、宿泊費、会費、食費、空港からホテルまでの交通費、これらを払ってもらえる。ほとんどタダで渡米できるのは素晴らしい。</span></div>
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<span style="font-family: Helvetica Neue Light, HelveticaNeue-Light, helvetica, arial, sans-serif;"><br /></span></div>
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<span style="font-family: Helvetica Neue Light, HelveticaNeue-Light, helvetica, arial, sans-serif;">② パブリケーションや政策提言の機会が得られる。</span></div>
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<span style="font-family: Helvetica Neue Light, HelveticaNeue-Light, helvetica, arial, sans-serif;"> カンファレンス・ペーパーや、あるいはシンクタンクが提携している媒体で自分の書いたものをパブリッシュできる。また、他の媒体にもPR部門の協力を得てアプローチすれば掲載される確率が高まる。影響力のあるシンカーへの第一歩となる。</span></div>
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<span style="font-family: Helvetica Neue Light, HelveticaNeue-Light, helvetica, arial, sans-serif;"><br /></span></div>
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<span style="font-family: Helvetica Neue Light, HelveticaNeue-Light, helvetica, arial, sans-serif;">③ CVに書けることが増える。</span></div>
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<span style="font-family: Helvetica Neue Light, HelveticaNeue-Light, helvetica, arial, sans-serif;"> 貴方の研究やリーダーシップを磨くことにスポンサーがついた、すなはちお金を出すに値するとの証明書が与えられた。フェローの力で掲載できればパブリケーションレコードの項目も賑やかなものとなる。</span></div>
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<span style="font-family: Helvetica Neue Light, HelveticaNeue-Light, helvetica, arial, sans-serif;"><br /></span></div>
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<span style="font-family: Helvetica Neue Light, HelveticaNeue-Light, helvetica, arial, sans-serif;">④ オールドボーイズネットワークへようこそ。</span></div>
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<span style="font-family: Helvetica Neue Light, HelveticaNeue-Light, helvetica, arial, sans-serif;"> 政府、シンクタンク、大学、民間、NGO、ジャーナリズム、これらの世界で将来上に立つかもしれない各国の若手と交流し議論し切磋琢磨していけるのは他所では得られない「資産」となるだろう。築いたネットワークはいずれ仕事や研究の上で助けとなる日がやってくる。</span></div>
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<span style="font-family: Helvetica Neue Light, HelveticaNeue-Light, helvetica, arial, sans-serif;"><br /></span></div>
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<span style="font-family: Helvetica Neue Light, HelveticaNeue-Light, helvetica, arial, sans-serif;">⑤ キチョハナカンシャ、シニアに話せる訊ける覚えてもらえる。</span></div>
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<span style="font-family: Helvetica Neue Light, HelveticaNeue-Light, helvetica, arial, sans-serif;"> そしていつしか自分がシニアになるかも。日本の新聞メディアにも登場するM緑さんやエアシー総本山の偉い人と名刺交換し、質問し、自分の考えをぶつけることができる。何度も繰り返して印象付けることができたら、何かいいことあるかも。</span><br />
<span style="font-family: Helvetica Neue Light, HelveticaNeue-Light, helvetica, arial, sans-serif;"><br /></span>
<span style="font-family: Helvetica Neue Light, HelveticaNeue-Light, helvetica, arial, sans-serif;"> ざっと挙げてみましたが、このような機会を得られたとして、それを活かすのも殺すのも己次第であるととみに思います。</span><br />
<span style="font-family: Helvetica Neue Light, HelveticaNeue-Light, helvetica, arial, sans-serif;"><br /></span>
<span style="font-family: Helvetica Neue Light, HelveticaNeue-Light, helvetica, arial, sans-serif;"> 安全保障、それも日米関係に限定されますが、国内であれば<a href="http://www.rips.or.jp/fellowship/post-1.html">平和安全保障研究所(RIPS)の日米パートナーシップ</a>などは、特にアカデミックなキャリアを志向する方なら是非トライしたほうが良いものでしょう。</span><br />
<br />
また、ハワイのEast West Centerには、<a href="http://www.eastwestcenter.org/education/student-programs/opportunities-study/ewc-graduate-degree-fellowship">ハワイ大で修士号もしくは博士号取得を目指す応募者限定ですが、24か月資金を出してくれるフェローシップ・プログラム</a>があります。<br />
<br />
だいたいこんな感じです。</div>
DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-22617550645961615822014-08-30T17:30:00.000+09:002014-08-30T17:41:10.795+09:00ハワイにてとある安全保障フォーラムのためハワイ・ホノルルに来ています。<br />
<br />
今回の会議は米国と台湾のシンクタンクが共催する、台湾や両岸関係、アジア太平洋の安全保障をテーマにしたものです。<br />
<br />
今年はNational Interest誌にミアシャイマーの"Say Goodbye to Taiwan"が掲載されたり、5月に習近平がCICA(アジア相互協力信頼醸成措置会議)で「アジアの安全保障はアジアで解決されるべき」と述べたりなど、いつものことですが日本の集団的自衛権行使も含めて話題が豊富で刺激的な議論が展開されました。<br />
<br />
米台関係や両岸関係、そして日台関係は私の専門ではないですし、普段日本のメディアにおいて国際関係で台湾に目を向けることは稀なので、いい勉強の機会でした。<br />
<br />
ここで全てを書くことはできませんが、「フィンランド化」という表現が何度も登場し、中台サービス貿易協定とそれを受けての向日葵運動が言及され、台湾の未来に対する不安や危機感など、台湾からの参加者を聞いてつぶさに感じ取ることが出来ました。<br />
<br />
地域の安全保障は厳しさを増し、と最近よく言われますが、台湾にとっては特に切実です。米国に見捨てられるリスクとそれに対する恐れについては、尖閣を巡って必死に大統領の明示的な確証を取りに行った日本以上です。<br />
<br />
また、集団的自衛権を行使可能にしようとする日本に対する期待も強く感じられました。もとより旧宗主国で米国の同盟国で自由民主主義国とあって、日本を味方と見てくれているとは思っていましたが、想像以上のものを同じ若手研究者・専門家の話から感じました。ある意味日本について楽観的に見すぎているのかなという気もしました。<br />
<br />
このような国際会議の場に日本の若手が参加し、時に発言しプレゼンスを持つことは非常に大切であると思います。プレゼンターを務めるシニアの見方は当然勉強になりますし、コーヒーブレイク時に質問したり挨拶したりネットワーキングするのも大事です。<br />
<br />
さて、余談ですが、用意されたホテルで台湾人研究者と相部屋になり、色々語らうことができました。<br />
<br />
彼は私たちが参加しているプログラムに5年以上前から参加してる先輩になるのですが、「昔は日本人と韓国人は仲良くしてたけど、最近はそういう機会が減ったね」という旨を指摘されました。<br />
<br />
その時の会議のテーマ、場所によって顔ぶれは変わりますし、個人的にはこれまで行われた会議やワークショップではあまり韓国人と知り合ってないので何とも言えないですが。<br />
<br />
この数年間の両国の関係悪化の影響が若手の交流に及んでるとしたら、両国にとって望ましくないことでしょう。米国、台湾の専門家の知り合いを増やすことができたので、次は韓国の知日派とネットワークを形成できたらと思います。<br />
<br />
<br />DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-50084613827511041602014-08-21T23:10:00.000+09:002014-08-21T23:41:59.240+09:00グローバルスーパーリッチ×ペイ・フォーワード=アイス・バケツ・チャレンジむか~しむか~し、あるところに、ホワイトバンド(ry<br />
<br />
今巷で話題のALSアイス・バケツ・チャレンジですが、次に3人に繋いでいくというので「<a href="http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%89_%E5%8F%AF%E8%83%BD%E3%81%AE%E7%8E%8B%E5%9B%BD">Pay It Forward</a>」を思い出しました。いい映画です。泣けます。ハーレイ君が成長する前です。<br />
<br />
ALSという難病に対する認知度を高め、かつ寄付を募って研究等を支援するという善行、善意のアクションです。とても素晴らしいと思います。<br />
<br />
ですが、個人的にはかなりscepticalにならざるを得ません。アイス・バケツ・チャレンジ以前から、この手のキャンペーンについて疑問を持ってきました。前々から「KONYはどこに消えた?」と問い詰めたいし、ミシェル・オバマの#bringbackourgirlsにイラッとしてきました。<br />
<br />
<img src="http://i.kinja-img.com/gawker-media/image/upload/s--XOxkGk14--/c_fit,fl_progressive,q_80,w_636/vztg64n9yf9jj7aj8jg2.jpg" height="180" width="320" /><br />
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<br />
上に挙げた過去の事例でお気づきになられた方はいるでしょうか?<br />
<br />
いずれも一過性のキャンペーン、アクションがPRとしては成功したかもしれないけれどもプロジェクトとしてアチーブメントを得られなかったものです。<br />
<br />
瞬間最大風速、一瞬の話題性はあるものの、運動として強度・熱量を固定して持続できず、流行が過ぎればそれで終いとなったものです。<br />
<br />
先ほど「PRとしては成功」としましたが、啓発という点で考えても、人々に課題・問題を深く理解させることに成功したかは疑問が残ります。ホワイトバンドを「あー、ヒデがやっていたな」ということを思い出せても、何を目的としたキャンペーンだったか思い出せる人間がどれだけいるでしょう?<br />
<br />
ビル・ゲイツ、ザッカーバーグ、スピルバーグ、いわゆるグローバル・エリートやセレブリティがWAになって氷水被ることで注目とお金は集まっているけど、ニュースとして消費されてそれで終わりになることを強く危惧する次第です。<br />
<br />
次に、数多ある難病や問題の中でただ一つALSが取り上げられて、患者さんとそのご家族、治療法を探す研究者は支援を受けられて救われるかもしれないけど、その他は?<br />
<br />
ちょうど今借りて読んでる<i><a href="http://www.amazon.co.jp/Plutocrats-Rise-Global-Super-Rich-Everyone/dp/0143124064">Plutocrats: The Rise of the New Global Super-Rich and the Fall of Everyone Else</a></i>の邦訳から次の部分をご紹介します。<br />
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<br />
<blockquote class="tr_bq">
「慈善資本家が及ぼす力は大きく、一国の社会的セーフティネットを意図せず変えることすらある。アフリカの一部の国では苦情が出ている。現地の医師や看護師が、ゲイツの潤沢な資金をもって進められてるエイズ治療薬、結核ワクチン、マラリアワクチンの無料配布プログラムに気を取られ、地味ではあるが、人びとが心から必要とする日常の医療行為をおろそかにしているという」(p120)</blockquote>
ALSアイス・バケツ・キャンペーンはjustでrightだけど、unfair。例えば新井克弥氏の「とりあえず全員がトクする」という見方は、距離を置いて外から見ると必ずしもそうだとは言えないところがあるのではないでしょうか。<br />
<br />
繰り返しますが参加者はお金も影響力もある方々です。それがみな一つの方向へ進み、一つの病気をフォーカスしたときの勢いや既に我々が目の当りにしている通りです。それだけに注目やリソースが相当偏ってしまうことを懸念するのです。<br />
<br />
このキャンペーンの目的や動機は断じて否定されるべきものではないのですが、それゆえに悩ましいと思います。<br />
<br />
<br />DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-23694933561314537692014-08-17T14:35:00.002+09:002014-08-17T14:35:21.679+09:00ロシアのウクライナ侵攻?この1週間弱というもの、ロシアがウクライナに侵攻するのではないかとの見方が各所から示されています。(参考:<a href="http://bylines.news.yahoo.co.jp/koizumiyu/">露軍事専門家・小泉悠氏</a><u>解説</u>)<br />
<br />
15日には英Guardian紙は<a href="http://www.theguardian.com/world/2014/aug/14/russian-military-vehicles-enter-ukraine-aid-convoy-stops-short-border">ロシアの装甲兵員輸送車23台と補給用のトラックなどの車列がウクライナ領に侵入した</a>と報じました。その後、ウクライナ側からロシアのコンボイを破壊した旨発表されており、ロシア側はこれを否定しました。<br />
<br />
これまでのところ「ロシアは本格的な軍事侵攻に踏み切らないだろう」という見方をしてきたのですが、一段と緊張が高まっている今も基本的なラインは変えなくてよいのかなと考えています<br />
<br />
ウクライナ東部においてキエフのポロシェンコ政権の統治を否定する武装勢力を支援して不安定化を図る、当初の政策は継続するでしょうが、口実を設けて(人道支援?)大部隊を越境させて云々する可能性は低いと見積もります。<br />
<br />
個人的にはロシア側に現時点で軍事侵攻の意図はなく、欧米発の侵攻懸念は情報戦や心理戦の一環なのかなと見てます。根拠は特にないですが。より効果的な作戦を遂行するにはいいタイミングではないのは確かでしょう。<br />
<br />
検討すべき要素、リスク因子は多々ありますが、欧米筋から牽制球が投げられている状況で、クリミア併合までのようにスムーズな作戦を展開することは難しいのではないかと見ます。<br />
<br />
裏をかいて出し抜くことができなければ、望ましい成功を得るのは難しくなります。<br />
<br />
そして、「なぜ今やるのか?」という点でもっともらしいものが無いかなと。不安定化への関与から自ら軍事行動を起こすのはプランにあるにしても、ギアを上げるポイントがここである理由が特にないのではないでしょうか。リスクもコストもかかる介入作戦へ、それは政策の継続でなく一つの旋回(pivot)となる以上、そこには相当な根拠と支柱が要ると見ます。<br />
<br />
ロシアにとって、プーチン大統領とクレムリンの面々にとって、主体的に大きなピボットを行うのは、ワシントンの政策立案者が考えているよりははるかに難しいものと見ます。<br />
<br />
思えば連合協定潰しにしてもクリミア併合にしても、ロシアは受け手に回っていました。決して場当たり的やその場しのぎとは評価しませんが、必ずしも有利に、上策を打ってきたとは言えないのが実情でしょう。<br />
<br />
ここに来てロシアが仕掛ける、というのは一貫していないし合理的でないし、警戒する西側が情報戦で一手封じにかかったというのが個人的見解です。<br />
<br />
<br />DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-91520148600676513862014-07-20T22:30:00.000+09:002014-07-21T11:46:30.904+09:00アイアンドームに見るイスラエルのしたたかさ去る7月2日に戦略研究学会の講演会でかのマーティン・ファン・クレフェルト御大の話を直々に伺う機会がありました。<br />
<br />
氏は話の中で、「イスラエルは『弱く貧しい』哀れなユダヤ人国家が『豊かで強くて邪悪な』アラブ諸国に侵攻されている!というnarrativeで国際社会(≒the West)、とりわけ同情と莫大な支援を得てきた。シモン・ペレス(現大統領)はこの世界(物乞い)のチャンピオンだね」といった趣旨のことをさらっと述べておられました。<br />
<br />
ウォルト&ミアシャイマーの<i>The Israel Lobby and US Foreign Policy</i>の前半部分第1章"The Great Benefactor"に詳しいですが、2005年までにイスラエルは経済・軍事支援で計1540億ドル相当の支援を米国から受けてきました。これはほんの一例で、陰に陽にイスラエルは米国から多くを得てきました。<br />
<br />
今再び、パレスティナ・ガザ侵攻と対ハマス軍事作戦が連日国際ニュースのトップを(ウクライナ東部でのマレーシア航空機撃墜事件と並んで)占めていますが、今回改めてイスラエルの貢がせ上手を再確認させられました。<br />
<br />
それは同国のミサイル防衛システム「アイアンドーム」についてです。(以下は<a href="http://complex.foreignpolicy.com/posts/2014/07/15/israels_iron_dome_gets_new_funding_as_gaza_fight_intensifies?utm_source=Sailthru&utm_medium=email&utm_term=Flashpoints&utm_campaign=Flashpoints%20July%2016">Foreign Policyの記事</a>を参照にしております。)<br />
<br />
今般の紛争においても、度々ガザ等から発射されたロケット弾を迎撃・無効化し、イスラエル側の犠牲を抑えています。イスラエルは最終的に地上軍侵攻作戦に踏み切りましたが、人口密集地への攻撃を(イスラエル側曰く)90%シャットアウトできるアイアンドームは、犠牲者の最小化で報復地上戦の必要性を薄れさせていたとの指摘も出ています。<br />
<br />
<div>
このアイアンドームについて、米議会上院歳出小委員会(appropriation subcommittee)は7月16日、プログラムの拡張にさらに1億7,500万ドル拠出すること(2015年会計年度の国防総省要求1億7,500万ドルに上乗せ、つまり倍増と筆者理解)で全会一致で合意しました。ちなみにアイアンドームは2011年以来7億2,000万ドルの資金支援を受けています。<br />
<br />
しかも、今年3月5日の両国間の合意でアイアンドーム関連の生産(イRafael社と米Raytheonがパートナー)について2014年に30%、2015年に55%を米国内で生産すると取り決めたとのことですが、以前は米国内での調達は予算の3%程度でしかなかったとのこと。<br />
<br />
米国からも資金がつぎ込まれることへの支持理由は(1)多くの市民の生命を守っている(2)費用対効果に優れている(3)アイアンドームの技術が米国のミサイル防衛システム改善に資するといった観点から。<br />
<br />
最終的に米国の防衛能力向上で回収される名目があるとはいえ、兵器システム開発で多分に米国の支援に裨益してきたイスラエルには、ただただ驚嘆するのみです。<br />
<br />
ケリー国務長官が最優先で取り組みながら失敗に終わった中東和平交渉や今回のガザ侵攻で、米国は支援を梃子にイスラエル側の意思決定に影響力を及ぼせていないなと感じますが、米国内におけるロビーも含めてやはりイスラエルは「特別」だと思いますね。<br />
<br />
<br /></div>
DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-20391485250209952662014-06-23T20:35:00.001+09:002014-08-17T14:35:48.598+09:00セルフヘルプ失敗というのは自分を見失ったり、日頃の意識付けができていなかったり、大きな枠組みを失念した時に起きる。<br />
<div>
<br /></div>
<div>
集中したり注意を払っているときに失敗する人は少ない。たいてい、気を抜いていて、深く考えずイージーに繰る時に過ちを犯す。</div>
<div>
<br /></div>
<div>
無意識に不用意にやったことが自らに深い傷を残すことになりかねない。そうならないためには、集中が切れ力が抜けた時に露わになる本性を磨かねばならない。</div>
<div>
<br /></div>
<div>
意識を失った格闘家がなおも体に叩き込んだ動きをとるように、日頃から己の脳の奥に意識付けをしなければならない。</div>
<div>
<br /></div>
<div>
敵は己にあり、自分もまたリスク因子。</div>
<div>
<br /></div>
<div>
困ったことにならないための危機管理、その基本、要諦を3〜4点ほど。</div>
<div>
<br /></div>
<div>
1. 誰かが見ているという意識付け</div>
<div>
政治家が失言するのは身内の会合や支持者向けの講演が多いと言われる。記者に囲まれている場で舌禍をやる者はほとんどいない。いつ、いかなる時も、自分が主役であると心構えていれば、気は引き締まるもの。</div>
<div>
<br /></div>
<div>
2. いつも通りは落とし穴</div>
<div>
繰り返しと馴れ合いが危機に対する感覚を摩耗させる。いつもやってることさ、みんなやってるさ、で油断して痛い目を見てからでは後の祭り。1と重複する点もあるが、自分を中心に置いて、内側にあるものによって行動を決める。環境に流されるのではなく、環境を見て。</div>
<div>
<br /></div>
<div>
3. 相手を過小評価しない</div>
<div>
侮りや慢心はケガの元。</div>
<div>
<br /></div>
<div>
4. 優先すべきを決めて、セーフティファーストで</div>
<div>
銃を突きつけられたら両手を上げ、撃たれまいとする。何が大事か、咄嗟に判断するのは難しいから、予め簡単に決めておく。何かを守るには何かを諦める必要が出てくることもある。</div>
<div>
</div>
<div>
</div>
<div>
付言するなら、ヒューマンエラーは起こり得る、完全な予防策はない、先の事はわからない。</div>
<div>
<br /></div>
<div>
だからこそ、備えあれば憂いなし。</div>
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DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-3587438003859306977.post-83665607400601160892014-04-22T08:08:00.001+09:002014-04-23T08:03:48.988+09:00オバマ訪日、日米関係を太平洋網へ拡大する時ちょうど1カ月前になりますが、ワシントンで日米関係についてのトラック1.5(政府当局者と民間識者の双方が参加する)の会議があり、両国の政治、経済、そして安全保障について意見が交わされました。<div><br></div><div>クローズドな会議のため内容は詳らかにできませんが、若手として末席で議論、指摘、批判、反論、応酬を聞いていた身として、オバマ大統領の訪日直前に意見を述べたいと思います。</div><div><br></div><div>中国のプレッシャー、予測不可能な金正恩の北朝鮮と、東アジアの安全保障は過去数年変わらないチャレンジに直面しています。</div><div><br></div><div>日米関係の内部に目を向ければ、米国の力の限界、財政的制約と国防費削減、国民の内向き・対外関与に消極的な姿勢が一方の課題であり、他方で安倍政権の方向性、歴史問題をめぐる摩擦、人口減少する日本の国力の持続性がともすれば懸念材料とされています。</div><div><br></div><div>不確実性の時代に財政的にも外交的にも緊縮的な米国と、内外の挑戦を受けて、日米関係を再定義しアジア太平洋の安全保障秩序の再構築が求められている<span style="font-family: 'Helvetica Neue Light', HelveticaNeue-Light, helvetica, arial, sans-serif;">のが、現在の情勢と言えるでしょう。</span></div><div><br></div><div>合衆国大統領としては18年ぶりに国賓として日本を訪れるオバマ大統領と、安倍首相の首脳会談では、変動するアジア太平洋に両国が機軸となっていかにアプローチするか、特に東シナ海の尖閣諸島のみならず、南シナ海でも周辺諸国と摩擦を引き起こし、紛争リスクを抱える中国に明快なメッセージを送ることが肝要となります。</div><div><br></div><div>なお、TPPの対立する事項について政治決断で乗り越えて大筋合意に持っていくのは、今回の訪日でなければならないものではありません。</div><div><br></div><div>米国の政治事情から、中間選挙前にオバマ大統領が議会からTPA(貿易促進権限)を得る可能性は極めて低く、最終的にTPP交渉が包括的に妥結するのは来年以降と踏みます。</div><div><br></div><div>オバマ大統領は、今回の訪日で日米安保への強いコミットメントを再保証することが不可欠でしょう。シリアやウクライナ、世界の裏側での外交でオバマ大統領のアクションを伴わない言葉に対する信頼度は低下していますが、それでも東京ではっきりとした文言で日米関係を強調することに意義はあります。</div><div><br></div><div>過去数ヶ月に安全保障政策でいくつかの決断をし、安定した政権基盤の上にリーダーシップを発揮できた安倍首相は、日本の国際協調主義への転換をアピールするとともに、日米関係を通して地域のスタビライザーたらんとするところを明確化する必要があります。</div><div><br></div><div>現段階では時期尚早でしょうが、日米は二国間に加え、多国間の枠組み作りの形で、より重層的で安定的な地域の安全保障体制を支える共通のビジョンを打ち出せたら良いと考えます。</div><div><br></div><div>拡大された戦略的ネットワークは、日米が地域の安全保障と、その上に成り立つ経済的繁栄にコミットする有用なツールとなるでしょう。</div><div><br></div><div>もちろん、中国に対する脅威認識と対応や、北朝鮮政策において、日米関係の中にもギャップが生ずることは、互いが互いの国益を追求していく中においてあり得ることです。</div><div><br></div><div>そこで、前もってビジョンをしっかり共有しておけば、方向性が大きく食い違うおそれは小さくなります。言わずもがな、関係をメンテナンスする上で両国間での緊密な協議を増やすことが求められます。</div><div><br></div><div>21世紀の国際政治の重心は、我々が生きるアジア太平洋にあります。この大きな歴史的地政学的変化に適応するため、この日米関係を再強化し、存分に活用することが求められています。</div><div><br></div><div><br></div>DaichiNotGaeahttp://www.blogger.com/profile/14879669508541408883noreply@blogger.com0