オバマ大統領は経験者や専門家が語ったことに耳を傾ける必要がある。米国とフランスが「イスラム国(IS)」掃討に乗り出したとき、トニー・ブレア前首相は「地上軍派遣の選択肢を排除すべきではない」と述べた。デンプシー米統合参謀本部議長も議会の証言で地上軍の関与の可能性について言及した。
早くからオバマ政権の当局者が認めているように、エアパワー、空爆に依存した戦法では短期間に目に見える勝利を収めることはできない。国防総省のジョン・カービー報道官はシリア反体制派やイラク軍に地上での役割を期待する発言をしたが、両者はISを打倒するには明らかに力不足だ。
私は自由主義的・人道的介入を支持するし、ISの過激主義とテロリズムを打倒しなければならないと考えるが、今オバマ政権と有志連合が実施しているイラク・シリアでの空爆介入には極めて否定的だ。ISの残虐行為と脅威に晒される市民を見て「何かをしなければならない」というのは間違いではない。しかしただ「何かをする」のは戦略ではない。
改めてクラウゼヴィッツの言を借りるなら「戦争は別の手段による政治(政策)の継続」である。米国と有志連合の指導者は対IS戦の先の構想を持ち得ているのだろうか? 手段も目的も、軍事合理性も政治合理性も欠いたシリア空爆はまさにDo the stupid stuff、馬鹿をやることでありオバマが避けてきたことではないのか? それから、デイビッド・キャメロン英首相は野党のリーダーだった時を思い出すといい。「ミサイルと爆弾は最悪の大使」だ。
今やっているのはただのcreeping interventionだ。ずるずると深みにはまり、長い戦争を強いられる。それがもたらすのは災禍だ。米情報機関の分析では、ISは米国にリーチしテロ攻撃を行うだけの能力は持っていない。米人ジャーナリストの斬首は野蛮で吐き気を催すものだが、この見通しのない戦争を始める切っ掛けとして相応しいものではなかったろう。
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