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2/05/2012

橋下徹の台頭とやられ役たち

今一番勢いあって方々から注目を集めている政治家を一人挙げろといったら橋下徹大阪市長で決まりだろう、海の向こうのThe Economistで野田首相と彼を並べた日本政治に関した記事が出るくらいね。先日ロンドンでシンクタンクの知り合いに日本政治について簡単に聞かれた際、国民の多くが二大政党に失望している中で来たる選挙で第三勢力、台風の目となりえる男について手短に、しかし野田や谷垣についてよりも長く、話しもした。

(個人的には大阪府民でも大阪市民でもない以上、総選挙になって彼が率いる維新の会が打って出てきていない現時点で関心は薄めだけれども、少し彼についての評価を自分なりに整理しておこうと思う)

真っ先に言えるのは彼が<小泉的>スター性や<小泉的な>批判も受ける独裁的と目されるスタイルよりも多くの、いまの日本で政治家をやる上で有利になる政治的武器を有していることだ。「自民党化」した与党・民主党や下野して2年以上経ってもちっとも「変わらない」自民党の、永田町の政治家たちにうんざりしている人々にとって、42歳と若くそして地方の首長・市長というアウトサイダーである点は新鮮かつ魅力的に映る。

彼の弁護士とTVタレントから転身してきた叩き上げのキャリア、バックグラウンドも好まれるものだろう。ある種のパフォーマンスもこなせるし、何より国民を喜ばせることを言うセンスーーつまりマーケティングと、それを裏返しにしたプレゼンが他の人間と比べると抜けている。真っ直ぐな表現、言葉遣いは荒っぽくそれゆえに人々にとって難しい用語でけむにまいたり丁寧だが屁理屈に聞こえる大半の同業者より親しみやすい。

しかし何といっても彼をスターダムに押し上げる上で欠かせないのはわかりやすく勝利をほぼ確実にする舞台、いかにもな敵役の存在だ。小泉元首相は自民党内に抵抗勢力を求めたが、彼の場合はヒールとしての「抵抗勢力」のほうからやってきた。先の大阪市長選での自民・民主・共産の既存政党、そのどれもが有権者の多くから厭きられている、が一致団結して敵に回った時点でそれは橋下にとってかけがえのない政治的資本、支持の源泉をもたらした。

彼は賛否を巻き起こし、多くの人々から支持を集める一方でわかりやすい敵がいる。最近立て続けに対決した森永卓郎、浜矩子(経済学者)、山口二郎(政治学者)らは同じ過ちを犯した。代替となる刺激的かつ魅力的なビジョンを持たずに、単なる批判のための批判をした。三人に関して付け加えるなら、大学教授という大して実社会に貢献できているわけでもない(と見られるし、実際に今の日本の政治経済が御覧の有様であることが彼らの教育とオピニオンの価値を疑わせる)権威を着ているのがネガティヴな印象を抱かせるだろう。

彼が対決する相手は常に彼が意識している有権者からみて「嫌な奴ら」だ。公務員以下税金からの支出で生活しているものは特にこの不景気下において敵視されがちだ。予期される次期総選挙で彼の勢力は野田政権の消費税増税の方針から確実にモメンタムを得る。それらは彼の弱点や欠点を補って余りあるプレゼントになるだろう、勝ち馬に乗ろうと目論んで資金や候補者も集まりやすくなるし他の地方や中央の勢力で秋波を送る節操ないところも既に出てきている。

前述したとおり彼はアウトサイダーでチャレンジャーだ。これと競うなら次のことを忠実にやることだ。彼とははっきり違って人々を惹きつける、そして彼のものを圧倒できるビジョンを、国民になるたけ理解しやすいよう平易な、説得的で同時に夢中にさせる言葉で伝える。それだけのことを遂行できる政治家ほど、年毎に総理大臣が交代する国の政界と縁遠い存在はないがね。

最後にThe Economistの分析にある彼の戦術の長所の一つ目と三つ目を抜粋しておこう。二つ目は彼の側近、ブレーンに関するものなので割愛する。

・’He has a clear short-term political goal.’(彼には明快な短期の政治的目標がある:ここでは大阪都構想)
・’he is pretty persuasive.’(彼はかなり説得力がある:前原が都構想について納得させられたことが引き合いに出されている)

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