日曜午後、仕事の携帯に見知らぬ番号からの着信。また、現地の人間が間違い電話か(この国ではよくある)と思って出てみると、電話の相手が無感情な声で英語で喋りはじめた。
「君とこの国の内政、地域情勢の意見交換をしたい。今度会えるか?」
相手の名前は、つい先日参加したレセプションで名刺交換したロシア大使館の経済担当書記官のものだった。その時は自分がロシア語を勉強したことや、モスクワに旅行したことを話題に会話を弾ませようと試み、何とも読み取り辛い相手の関心を惹こうとしたものだ。
いつが空いている? この日の午前なら。では〇〇ホテルで会おう、君のオフィスから近い。
アポが成立し、電話を切る。向こうがどういう気持ちかはわからないが、きっと表情は変わっていないだろう。こっちは、あちらからの接触に予想通りという満足感と、用心してかからなければならないという緊張感が入り混じっていた。
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