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6/30/2017

お前のようなエコノミック・オフィサーがいるか

 決着は一瞬で、均衡はあっけなく崩れる。張り詰めた神経が一瞬緩む。

「アフリカ連合平和維持ミッション(AMISOM)のCONOPS」

 その一言を聞き漏らさない。CONOPS、だって?

 CONOPSとはConcept of Operations、作戦構想の略称だ。

 そんな専門用語、ただの経済担当官(エコノミック・オフィサー)が知るものじゃあない。

 職場に戻った後で経済担当の同僚に聞いてみた。「CONOPSって知ってます?」(答えは、もちろんノー、ニェット。)

 疑惑は確信に変わった。目の前にいる男は外交官ではない。
 
 それがGRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)かSVR(ロシア対外情報庁)かまでは分からない。

 だが、こちらだって駆け出しながらインテリジェンスで飯を食っている。

 正体が知れたら、やることは一つ。




















 逃げるんだよォ!




















 腕時計をちらっと見て、シグナルをそれとなく送る。

「時間は大丈夫か?」

「申し訳ないが、そろそろミーティングがあるので行かなければならない」

この国の内政について当たり障りのない意見交換をした後で、間合いを切る。

「次は南スーダンとエリトリアについて話がしたい」

「ああ、わかった。また今度」

ホテルを後にし、車に乗って一息つく。何とか、してやられずに済んだ。

手が汗で湿っている。

と、同時にそこはかとない充足感があった。

「引き分けだなー」

 本質的なことに関して情報を引き出せなかったし、こちらも喋りすぎなかった。と思いたい。

 しかし収穫はあった。少なくとも相手が何者であるかを看破できたろう。

 おそロシア。

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