「アフリカ連合平和維持ミッション(AMISOM)のCONOPS」
その一言を聞き漏らさない。CONOPS、だって?
CONOPSとはConcept of Operations、作戦構想の略称だ。
そんな専門用語、ただの経済担当官(エコノミック・オフィサー)が知るものじゃあない。
職場に戻った後で経済担当の同僚に聞いてみた。「CONOPSって知ってます?」(答えは、もちろんノー、ニェット。)
疑惑は確信に変わった。目の前にいる男は外交官ではない。
それがGRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)かSVR(ロシア対外情報庁)かまでは分からない。
だが、こちらだって駆け出しながらインテリジェンスで飯を食っている。
正体が知れたら、やることは一つ。
逃げるんだよォ!
腕時計をちらっと見て、シグナルをそれとなく送る。
「時間は大丈夫か?」
「申し訳ないが、そろそろミーティングがあるので行かなければならない」
この国の内政について当たり障りのない意見交換をした後で、間合いを切る。
「次は南スーダンとエリトリアについて話がしたい」
「ああ、わかった。また今度」
ホテルを後にし、車に乗って一息つく。何とか、してやられずに済んだ。
手が汗で湿っている。
と、同時にそこはかとない充足感があった。
「引き分けだなー」
本質的なことに関して情報を引き出せなかったし、こちらも喋りすぎなかった。と思いたい。
しかし収穫はあった。少なくとも相手が何者であるかを看破できたろう。
おそロシア。
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