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6/26/2016

「Brexitの決定:英国はEUの新たな最良の友人になる必要がある」byマルコム・チャルマーズ【前半】

 英国民投票の「離脱」という結果を受けて、マルコム・チャルマーズ(Prof. Malcolm Chalmers)RUSI副所長が、RUSIウェブサイト上に「Brexitの決定:英国はEUの新たな最良の友人になる必要がある(Brexit Decision: The UK Needs to Become the EU's New Best Friend)」というコメンタリーを寄稿していたのを紹介したいと思います。

構成は(1)序文、(2)政治、(3)経済、(4)新たな特別な関係構築、(5)欧州へのピボットとなっており、それなりに長いので(3)までを前半として、概要抄訳を紹介します。

(1)序文

1.英国民投票でEU離脱の意思が示された今、欧州との新たな協力モデルを作ることが、英国にとって戦略的政策の最優先課題だ。

2.NATOとEUを通じた国家間協力の制度機構化は、第二次世界大戦以来の大陸の安全保障を支える上で重要な役割を果たし、共通の課題に対処し競争的ナショナリズムを抑え込むことを可能としてきた。

3.欧州協力論は変わらず力強いが、制度機構の形は、新たな課題と新たな政治的現実に対応する上で変化する。英国と欧州のパートナーが直面する課題は、差し迫る英国のEU離脱を前にして、新たな協力の枠組みをどのように形成するかについて合意することだ。合意に至るのは容易ではないが、失敗のコストは、英国と欧州のパートナーにとって、高くつくだろう。

(2)政治

4. 英国は今EU離脱の道にあるが、目的地は不確実性に覆われている。先ず、国民的議論の中心は誰が次の首相になるかになるだろう。しかし、この議論はまた、政党間、ビジネス界そして一般社会での激しい議論と分断につながりそうである。欧州はこれからしばらくの間、英国の政治論議の中心になりそうに見える。この議論の主要な問いは、欧州との望ましい関係の性質についてになるだろう。

(3)経済

5.英国は、EUから流入する移民のコントロールを導入し、現在EUが握る市場規制を取り戻し、WTOのメンバーシップに基づいた貿易協定の交渉に向け速やかに動くことになる。

6.そのような政策の経済コストが、多くの予測者たちが現在予見しているぐらい大きいものと証明された場合、よりノルウェーとEUの協定に類似し、英国の規模と重要性を考慮にいれて修正された、新たな「特別な関係」を支持するよう政治指導者にますます圧力がかかるだろう。

7. そのような協定下で、英国は移動の自由継続とかなりの予算貢献の受け入れと引き換えに、EU市場への特権的アクセスを保つことになる。

8.多くの離脱支持者はそのような選択肢に猛烈に抵抗しそうであるが、国民投票後の急な景気後退という起こりそうな現実と、歳出削減と(または)増税の見通しが、どうであれ、より過激な離脱の選択肢の利点を説くことは難しくなる。景気後退は移民を減らし、移動の自由に関して変化の余地をもたらしそうである。

9.「特別な関係」オプションの包括的な原則は、英国は、いくつかの領域で現在加盟国として行っているよりも多くの国家的支配を行使し、しかし適切なところで多国間協力の利点を維持する、EUとの強い制度化されたパートナーシップを保つことを模索することである。このモデル上、英国はEUの最良の友人になりたいと熱望する。

10.他の欧州の指導者は、英国が完全に縁を切るのと新たな形態の密接な協力に動くことのどちらが好ましいかを独自に評価するだろう。彼らは強い国内の圧力、特にビジネス部門からの、英国との貿易コストの急激な増加を回避する協定に合意することを求める圧力に直面しそうである。

11.しかし欧州の政治指導者は、自国の欧州会議的な政敵が魅力的と思う前例を与えないよう、易々と英国を受け入れることに慎重になるだろう。

12.つらい景気後退が、難しい譲歩を受け入れるための英国への圧力を増やし、他方で英国の後を追おうとする他国を思いとどまらせるのに十分な痛みを負わせ、助けとなるだろう。
(4)と(5)は【後半】に続きます。

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