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1/04/2013

対ミャンマー外交について

麻生副総理が年明け早々ミャンマーを訪れ、3日にテイン・セイン大統領と会談、本日4日には共同開発するティラワ経済特区を視察しました。

テイン・セイン(元軍人・大将)が首相から大統領になったのは2011年3月、以来ミャンマーは民主化路線に舵を切り、未だ軍の影響は強く残っているものの、外の世界の予想をいい意味で裏切ってきました。

長年に渡って軟禁されていたアウンサンスーチー女史は昨年4月に連邦議会の議員になりましたし、テイン・セイン政権は少数民族の武装勢力との和平では、後述するカチン州のKIAを除いてほとんどの主要勢力と停戦に合意するという目覚しい「成果」を挙げてきました。

この急激な変化、そして改革姿勢を評価した欧州や米国が「飴」として、また一層の民主化や少数民族問題の解決を促すための「梃子」として続々と経済制裁の緩和に踏み切ったのが2012年でした。

我が国もこの潮流に乗って、ODA再開、今回麻生副総理が表明した5000億円の延滞債権や500億円の円借款再開を通じてミャンマーの民主化改革と経済発展を支援するのはもちろん、アジアの「ラスト・リゾート」とでも言うべきミャンマーにおいて政治的経済的に強いプレゼンスを確保したいところです。

主要閣僚、それもNo.2が最初の訪問先に同国を選んだのはとても意義深いことですし、新政権発足してすぐというタイミングも絶妙でしょう。日本が率先して延滞債権の解消に取り組むことで、近々開かれるパリクラブ(主要債権国会議)にてこの問題をクリアし、ミャンマーに投資する上での制約を一つ取り除くことに繋がることが期待されます。

しかし一方で、同国へ関与していく上で、少数民族やその人権に関する問題は道半ばの民主化同様に深く考慮されなければならないでしょう。ミャンマー国内では相当なスピードで我々にとって歓迎すべき変化が起きていますが、まだまだ脆弱で可逆的なものであると見ています。

(先月から激化している)北部カチン州の戦闘で政府軍が反政府武装勢力KIA(カチン独立軍)に対して空爆したと報じられ、昨日には軍が軍用機およびヘリを投入したことを認めました。

米国務省のヌランド報道官らが衝突のエスカレーションを憂慮する旨声明を出していますが、ここではもう1点、テイン・セインの政府がどの程度軍をコントロールできているのかも懸念されるところです。しっかり手綱を握って攻撃を自制させなければ、政権の和平に対する本気度合いが疑われるところでもあります。

最後の反政府武装勢力KIAとの停戦が破られて交戦状態に入ったのが2011年の6月ですが、戦闘の長期化と、昨年幾度となく噴火した西部ラカイン州のロヒンギャ問題は、これまでテイン・セインが積み上げてきた彼と彼が統べる国の評価に傷をつけるものです。

麻生副総理はこれら少数民族問題を担当し、テイン・セインの側近でもあるアウン・ミン大統領府相とも会談しました。

年末年始に紛争が激化してから最初に同国を訪れた主要国の政治家として、やんわりと言うべきことは言ってくれたのではないかなと思います。

日本としては地政戦略的にも経済的にも、台頭する中国を意識して是が非でもミャンマーをこちら(自由民主主義)側にたぐり寄せたいところです。しかしそれはかの国が抱える幾つかの問題に目を瞑ることを正統化しないでしょう。


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