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1/02/2014

2014年の日本政治を読むという徒労

2013年レビュー

2013年は夏の参議院選挙を経て久方ぶりに安定政権が樹立されたことで、日本政治は混沌として複雑怪奇な状況を脱した。経済政策においては黒田日銀体制での金融緩和拡大と財政支出拡大の統合マクロ政策が奏功し、各種経済指標に明確な改善が見られた。二院を押さえたことに加えて、経済面での成功を背景とした高い内閣支持率+政党支持率を維持している安倍内閣は向こう3年間、国政選挙を気にせず、中長期の視点を持って政策を推進するマンデートを与えられた。

一方で野党はクレディブルな代替ビジョンを提示できていない。反対し、批判するのは重要な役割の一つであるが全てではない。特に民主党は政権を一度担当して国民を大きく失望させた手前、その声を聞いてもらう状態にない。分裂したみんなの党、いつ分裂してもおかしくない維新の会も新党設立時のフレッシュさやモメンタムを失った。

野党が頼りない中、自民党に対して有効な拒否権を有しているのが連立与党である公明党である。既に集団的自衛権を行使可能とする解釈改憲は先送りされるなど、政策面で一定の影響力を及ぼしている。

 

経済政策は先行き不安も

何にも増して重要なイベントは4月以降の消費税引き上げだ。経済の好転に伴う税収増を財源に、新規国債発行を抑制しながらの財政政策による手当は、短期的な経済の減速をある程度低減できる。同様に鍵を握るのは日銀の追加緩和であり、これが増税前になるか、増税後の四半期の経済成長率等の影響を見てからになるか、これまでの黒田総裁らの発言を踏まえると後者の可能性が高いだろう。

TPPも今年の大きなイベントとなる。米国が中間選挙の年となり、交渉参加国間のスタンスの隔たりもあって、早期の妥結は難しいと見られるが、各国とも一定の譲歩と妥協をしながら締結する方向で交渉を進めることは変わらない。域内自由貿易協定、高度に開放された統一的経済圏に加わることは、国内の政治経済体制にかなり劇的な変化を要求することになる。TPPの内容を受けて、市場から期待されている規制緩和などは徐々に現実味を帯びるだろうが、その速度は首相が高い支持率をリーダーシップに変換して与党内の反対を封じ込められるかにかかっている。

国際経済では米FRBが大規模金融緩和から少しずつ平時化を図ることになる政策転換が始まるが、金融危機以後のQEで新興国に流れ込んだマネーが逆流することによる負の影響が出てくるだろう。欧州では南欧を中心に高い失業率や需要の不足がデフレ圧力としてかかり、ドイツなどわずかな勝ち組を除けば不況の長期化が避けられず、将来にわたって競争力を失い経済が縮小しかねない。

「普通の国」化が進むも障壁は多い

NSCの創設、新たな国家安全保障戦略の策定、中期防と新防衛大綱下での変化する安全保障環境への対応、そして秘密保護法の成立と、秋冬に日本の安全保障政策は大きな転換点を迎えた。後世の日本の安全保障政策を研究する者にとって、この時期の政策は必ず注目され、東アジアの安全保障への影響、ひいてはグローバルな安全保障の観点で論じられることになるかもしれない。

2014年の最大のチャレンジは解釈改憲による集団的自衛権の解禁だ。この一点に安倍内閣の安全保障政策の評価がかかっていると言っても過言ではないが、秘密保護法の時の反発や、公明党の慎重論を受けて、早期の解釈改憲にこだわらず国民の理解を得るためにもう少し時間をかけることも考えられる。

解釈による「改憲」には必ずやメディア・スクラムによる批判が起きるだろうし、いかに中国の潜在的脅威を受けて国民の間に安全保障の強化を望む機運が拡がりつつあるとはいえ、「改憲」への抵抗は未だ大きい。逆に言えば、解釈改憲のハードルを乗り越えることができれば、具体的に日本の防衛力を強化する各施策はより円滑に運ぶことが可能となろう。

注目されるのは尖閣周辺で活発に仕掛けてくる中国の動向だが、既に習近平政権下で大国として振る舞う路線に入っており、2014年もその軌道が修正される見込みはほとんどないだろう。ADIZに続いて、東アジアで日本、ひいては米国を試す行動を選択する可能性は非常に高い。しかし現段階で不要不急の衝突を招かない程度に計算された行いをするだろう。

 

政治資本を要求する難題:原発再稼働

昨年末に仲井間沖縄県知事から辺野古移設の、行政上の手続きにおける承認を得たことで、鳩山政権時代に重しとなった普天間基地移設は少しずつ進むものと見られる。民主党前政権から直面しているもう一つの難題は原子力発電とエネルギー政策だが、経済最優先の安倍政権はいくつかの原発再稼働に踏み切るだろう。

消費税増税に燃料輸入コストの転嫁による電気代値上げが続けば、家計に出血を強いることとなり、経済全体の成長が続いても不満の声が次第に増えてくる。これは避けたいところであるし、政権としてどこかで再稼働により石油や天然ガスの輸入を減らして、貿易赤字を絞りたいところだろう。

一度野田政権の時に大飯を再稼働したこともあり、抵抗や反発はその時に比べれば小さいだろうが、それでも決定を下したときに世論は二分され、マスコミから批判を浴びるのは想像に難くない。再稼働決断の時期は夏以降が予想されるが、消費税や集団的自衛権、ほかにイレギュラーな事態(スキャンダル等)で政治資本を消耗していると、決断を先送りにするかもしれない。


続く?

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