「アメリカ衰退の神話'The myth of American Decline'」で先月話題になっていたRobert Kaganがアメリカが世界をより自由に、安全に、より豊かにしてきたんだよ!!!とCNNへの寄稿で述べているのを見て苦笑いを浮かべるなど。
「1941年には1ダース程度だった民主主義国家は今日は100以上に増え、20世紀の後半に世界のGDPは年平均4%増え、十億単位の人々が貧困を脱し、過去60年にわたって(大国家間の)戦争はなくなった」
それもこれをアメリカがグローバルなリーダーシップを発揮して秩序を維持してきたからだ、アメリカがその地位を退いたらこの秩序は誰が維持するんだ? という根本的な疑問には確かにポストアメリカを主張する知識人層は答えることが求められるだろうけど、彼が心配するようにパワーシフトがロシアや中国のような専制国家に好ましい世界秩序を形成することは考えにくいし、自由主義市場経済はジグザグ走行を余儀なくされつつももっとも優れた世界経済システムとして生き残るだろう。ロシアや中国の「国家資本主義」が米国「市場資本主義」に取って代わることは、おそらくない。もっと言えばNiall Fergusonが指摘するように、程度の差こそあれWe all are state capitalists!じゃないかと。
アメリカの相対的衰退、dominant powerから頭ひとつ抜けたgreat powerへの「降格」がそのまま既存の国際秩序の退潮に結びつく。このようなKaganの主張はネオコン特有の傲慢(hubris)であるなと思うね。
3/16/2012
3/15/2012
COINだよ
MA in War Studies在籍時に対反乱戦についての論文を読んでいたとき(2011年1月)のメモ。JSSの「19世紀COINドクトリンの起源」を下敷きに。
参考にMilitary Review 2006 Jan-FebのペトレイアスLearning Counterinsurgencyで示された14箇条を以下に抜粋。
その一、自分たちの手であれもこれもやろうとするな。
その二、素早くこなせ、「解放軍」の消費期限は短い。
その三、金は弾薬なり。
その四、利害関係者の数を増やすのは成功を左右する。
その五、費用対効果を各作戦の前に分析すること。
その六、インテリジェンスは成功の鍵。
その七、みんなで国造りをしよう。
その八、部隊部署だけでなく制度機構を建設するのを手伝おう。
その九、文化的地勢を知るのは支配力を増幅する。
その十、対反乱作戦の成功は単なる軍事作戦以上を要求する。
その十一、最終的な成功は地域の指導者次第。
その十二、(直接任務にあたる)戦略的な下士官のことを想起せよ。
その十三、柔軟で適応性あるリーダーの代わりはいない。
その十四、リーダーのもっとも重要な任務は正しい傾向を設定すること。
- 現地の一般人の信頼と支援を勝ち取るのは重要なのだけど、他方で下士官から政治レベルまで「武装したソーシャルワーカーになる(armed social worker)」ことの重要性を認識させなければ苦労する。フランスのbureau arabはこの点で批判されたようだ。
- なぜCOINのドクトリンの起源(origin)がフランス施政下アルジェリアだったかというと、英国の帝国主義と対照的に、フランスの植民地拡張と支配がmilitary driven、軍隊によって進められたのが背景のようだ。
- 英国の「成功例」であるマラヤ危機にしても北アイルランドにしても、非常に長期化している。米国が失敗したベトナム、そしてアフガンも普通の戦争よりも長い!
- 長期の戦争で民主主義の諸価値と制度がdeteriorateしていくのは避け難いのだと考えられる。
- 民主主義国家が当然視しているというか、無意識のうちに抱いている道徳的優越感、諸価値観が傷つけられることの損失は大きい。
- COINとは単なる強制力を伴う物理的支配(領土とか)ではないのだ、hearts and minds、ひいてはmoralの征服なのだ。
- 戦時下では人権や自由は抑圧される傾向にある。COINはその時期を長引かせる。Act quickly,とペトレイアスは書いているが、それは何も現地の人々の反感を買わないようにするためだけではない。自由民主政体が壊れるのを避ける上で大事なのだ。
- COINとは当該地域ならびに自国、そして国際社会なるもののhearts and mindsを勝ち取る戦い。
- 敵の殲滅や戦意喪失で片を付けるアプローチよりも時間はかかっても犠牲を押さえる間接アプローチが有効で好まれる、しかしそれは戦争モードを長引かせる点において民主政体のリスクに。
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