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11/16/2013

バンギに生まれた地上の地獄

3月に中央アフリカ共和国で反政府連合セレカが首都バンギを陥落させたとき、もしそんなものがあるとしたらだが、国際社会の反応は大きいものとは決して言えなかった。

多くの眼はその後数ヶ月シリアのいたましい内戦に向けられ、中部アフリカの貧しい内陸国がフォーカスされることは稀であった。

フランスのオランド大統領は、彼は国外逃亡した前大統領の介入要請に応えなかったのだが、中央アフリカが東アフリカのソマリアのようになりつつあると警鐘を鳴らしている。

今の中央アフリカ共和国は無秩序で、政府は存在すれども機能せずである。セレカの兵士たちは略奪、強姦、殺人を好き放題していて治安は崩壊状態にある。

また、感染症が発生しても行政は対応できず、国民はまともな医療にアクセスできない。既に多くの国民が混乱から逃れて難民化し、周辺諸国に流入している。

そして今、ムスリムであるセレカと、キリスト教徒との間で宗教対立が深刻化しつつあると報じられている。

見捨てられ、忘れられたアフリカの小国の行く末が気がかりだ。

8/29/2013

シリアに直ちに介入することが好ましくない8つの理由

久々の更新となりますが、差し迫った英米仏による対シリア軍事介入についてです。
最初に立場を表明しますと、私は人道的介入を是とします。
その上で今進められているシリアへの介入、限定的空爆という措置について懐疑的に考察したいと思います。


1.重要な(安全保障上の)国益が脅かされていない。
「(国益に)ならぬものはやらぬ」のです。

2.明確で達成可能な目標がない。
はっきりした介入後・戦後の青写真がなければ軍事的に成功しても政治的な成功に結びつけることは困難です。

3.リスクとコストが十分にありのままに分析されていない。
「意図しない結果」をもたらすリスクは常に伴うものですし、泥沼化を避けるために地上軍を派遣せず短期間の限定的空爆にとどめるとのことですが、化学兵器使用の話が出てきてから再検討・見直しを十分にした上での軍事オプションと言えるのかどうか。

4.他のあらゆる非暴力的手段が枯渇していない。
軍事的解決は最後の手段であり、中ロの拒否権で安保理が機能不全に陥っているとはいえ、国連調査団の報告次第では中ロにより真剣にシリア政府に対して働きかけさせる、外交的・政治的解決を図る道はまだ完全に閉ざされてはいないでしょう。可能性は極めて低いでしょうか。

5.際限ない関与を避けるための妥当な出口戦略がない。
今回の介入においては最初からシリア内戦そのものには本格的に介入する意図がありません。深入りしない前提なので出口戦略は必要ないものと解されていることでしょう。事が予定通りに運ばなかったとき、否応なく深みにはまったときになって慌てて戦略の修正を迫られるのは避けたいところです。

6.軍事行動の帰結について十分に考慮されていない。
2や5と関連しますが、化学兵器使用という「レッドライン」を越えたからということで受け身で始める戦いで、どこまで先のことを考えているか、影響について熟慮しているか懸念するところです。

7.軍事行動は(アメリカ)国民の支持を得ていない。
英米両国の世論調査では、空爆など軍事行動を支持しないのが5割超と、賛成する層を圧倒的に上回っています。

8.本当に広範な国際的支持を得ていない。
化学兵器は条約で禁止されており、規範・倫理の面でも当然その使用は許されないものです。また国連推計で10万人以上が既になくなっている内戦を、その一方で自国民に砲火を浴びせるアサド政権を国際社会はよしとしないでしょう。NATOの同盟国やアラブ連盟は介入を支持するでしょう、しかし実際にリソースを割き肩を並べてシリア介入に臨む国は限られています。


これらは所謂パウエル・ドクトリンにおいて設定された、軍事行動を起こす前に全てYesでなければならない質問を基にしたものであり、その全ての設問にNoで答えてみました。

介入はしなければならないでしょう、しかしこのような形で介入すべきではないだろうと率直に思います。気が進まなかったからこそ、人道的介入ではなく、「化学兵器の使用」という高いと思われたハードルを条件としたのでしょう。それが今回、アサド政権側が化学兵器を使用したことで介入を「余儀なくされた」、消極的な形で軍事行動に踏み切ることは、望ましい結果を得られないのではないだろうかと不安にさせられるのです。

今日のような状況に陥って受け身な姿勢で介入を選択することに、シリア戦略は失敗したのではないか? 読み違えたのではないか?と自問します。自分が政策当局者だったら、この条件で軍事介入をしたくはないというのが偽らざるところです。


6/04/2013

[RD]アフリカ調査日報~テロとの戦いinアフリカ大陸

■「神の抵抗軍(LRA)」が中央アフリカ共和国(CAR)軍に編入?【CAR
・現CAR軍の「セレカ(Seleka)」は3月までLRAと同じジャングルで行動していた。
DRCCAR、南スーダンに散り散りになったLRAの総員は250400人。
・セレカとLRAは協調することで合意しており、LRAの安全は保証されている。
(コメント):ボジゼ前大統領が反乱軍によって追われたことにより、近隣諸国との対LRA掃討作戦は暗礁に乗り上げている。中部アフリカ諸国において東部でM23と国軍の戦闘が散発的に発生しているDRCCARは不安定化の度合いを増している。

■米無人機がプントランドに墜落、1週間で2機目 【Somalia
61日早朝、プントランド北東部バリに偵察用無人機が墜落した。
528日にロワーシャベル地方で無人機(Shiebel Camcopter S-100)が墜落したことをペンタゴンが確認済み。

■仏、コートジボアール在住市民にテロの脅威を警戒勧告【Ivory Coast
・仏軍のマリ介入後、サヘル一帯の周辺諸国で報復テロのリスクが高まっている。
・コートジボアール政府は北部国境の警備を強化し、過激なイマームを緊密に監視しているほか、アビジャンの空港の警備も固めている。

■セルヴァル作戦とサヘル一帯に拡散するテロリズム【France】【Mali】【Niger
フランスがマリでの軍事介入に踏み切る前は同国北部を支配下に収めていたイスラム過激派勢力が南進しつつあったが、マリ政府・国軍が完全に制圧される前に押し返し、同国北部諸都市を奪回したのは成果と言えよう。しかしイスラム勢力の掃討には成功しておらず、テロリズムを減衰させ封じ込めるには至っていない。

■米国、北アフリカのイスラム過激派に懸賞金【North Africa
・米国務省によると、懸賞金の最高金額は「ボコ・ハラム」指導者アブバカール・シェカウの700万ドル。
・モフタール・ベルモフタールには500万ドルの懸賞金が掛けられた。
・このほか、AQIMの上級司令官の1人であるYahya Abu el Hammam500万ドルが、AQIMMUJAOのスポークスマンを務めるマリク・アボウ・アブデルカリムの情報に300万ドルの懸賞金が掛けられた。2人は北西アフリカの襲撃・誘拐を計画したとされており、その一例は2008年のニジェールにおけるカナダ人外交官を身代金目的で誘拐した事件が含まれる。あ

5/30/2013

Rainy season has come.


日本の軍事面での「再興」は安倍政権下で防衛予算が久方ぶりに増加していることもあって加速しつつあるけれど、歩みは慎重にしないと大国日本も中国同様に近隣諸国の警戒の対象になりかねないよとディフェンスニュース。(Editorial: Japan Must Tread Carefully

ミイラ取りがミイラではないが、軍拡を進める中国を恐れて対抗策を打ち出したら日本が恐れられるようになったというオチがつかないように、日本を突き動かしているエンジンがナショナリズムだと見られないように振舞うことが求められる。

集団的自衛権の行使解禁、NSCや諜報機関の設置と法令整備と、既に出てきている政策課題のどれをとっても、対内的にもまた対外的にも、誤解を招かないようにコミュニケーションを怠らず進めていくことが望ましい。

今のまま行けば夏の参議院選挙は勿論、次の衆議院選挙も比較的ラクに勝利を収めて政権基盤を固められる(イデオロギー色の強い諸問題に嵌まりすぎなければ、という条件付きで)情勢にあるという前提に立って、順次政策を形にしていくことができる。それだけの政治資本と、ダイナミズムある防衛政策を許容する外部環境が整っているという好条件を決して無駄にしないでいただきたいもの。

もう一つ紹介したいのが、クリスチャン・サイエンス・モニターの記事で、米国では働く女性・母親が一家の稼ぎ頭になっているというピュー・リサーチ・センターの調査を取り上げたもの。そのうち、シングルマザーはアフリカ系やヒスパニックの、若く大学に行っていない女性が多く、一方で結婚していて夫より稼いでいるのは白人で学位取得している女性だという。

米国では労働人口の47%を女性が占め、うち結婚して働く女性の比率は1968年の37%から2011年には65%まで増えている。この大きな変化の背景には、米国の製造業をはじめとする伝統的な「男の仕事」が大不況の間に消えたこと(elimination)が部分的にあると見られている。

製造業が生き残っていてエンジニアや職人の働く場所が多い日本の産業構造だと、女性の社会進出がスロウリーになるのもある程度むべなるかなと考えさせられるかな。

現在の米国のように、社会進出し働きつつ結婚して子育てもしている女性が増えると、彼女らの求める家族に優しい、子育てをサポートする政策がより好まれるようになる可能性が高くなるかもしれない。


5/19/2013

X-47B:米海軍の無人空母艦載機、発進テスト成功

「これは一歩(a step)以上だ。これは海軍航空隊の未来への一跨ぎ(a stride)だ」(Ted Branch大西洋海軍航空隊司令官)

「今日は海軍にとって記念すべき日だ」(Mathias Winter海軍プログラムエグゼクティブオフィサー)

5月14日に米海軍は開発中の無人機「X-47B」がヴァージニアの約160km沖で空母ジョージ・H・W・ブッシュ甲板から発進飛行テストに成功したと発表しました。(Defence News、動画有り)

開発中の同機はF-35の2倍の航続距離を有し、将来はステルス性能と攻撃能力を持つものと見られています。

ノースロップ・グラマン社が海軍の無人戦闘航空システム(UCAS)のために開発した試作機は2機あり、今後は陸上での着陸試験を繰り返した後に夏に空母への着艦試験を行なうとのこと。

無人空母艦載機の試験飛行は今年中に終了し、来年以降は攻撃任務に従事するためのオペレーショナルな空母艦載機を開発する、無人空母発進航空偵察打撃システム(UCLASS)と統合されることになる予定です。

未来の戦争はテクノロジーの進化によってますます無人化が進められていくのでしょう。その方向に着実に向かっていることを再確認させてくれます。X-47B開発の今後に注目ですね。

4/22/2013

民主化はミャンマーのムスリムたちを幸せにできるか?

民主政治は最悪の政体なんて、半分アメ公の血が流れてて頭の中に黒い犬を飼っていた、葉巻とアルメニアン・コニャックが好きな英国人は嘯いていた。民主主義の水で育ち民主政治の酸いも甘いも噛み分けてきた、先進諸国の人間からすれば、勿論民主主義は独裁・専制よりも「優れて」「良い」もので、ゆえに民主化は称揚され支援される。しかし民主化への営みが必ずしも福利を国民にもたらさないことは、ジャスミンの残り香も消えたチュニジアやエジプトを見ていれば、否定はできまい。


さて、先週はミャンマー/ビルマの民主運動家にして現在は同国国会議員、野党「国民民主連盟(NLD : National League for Democracy)」を率いるアウン・サン・スー・チー女史の27年ぶりの訪日がニュースで大きく取り上げられました。

ご承知のとおり、ミャンマーはつい2年前にテイン・セイン現大統領の下で軍政から民主化へと改革がはじまり、これを評価する欧米から長年続いた経済制裁を解除・緩和されて経済発展の道程を歩みつつある、アジア最後のフロンティアです。

しかし約1年前に連邦議会の補欠選挙でスー・チー氏が当選して議員となり、メディアへの検閲が廃止されこの4月からは民営の日刊紙が創刊されるなど、順調に民主化への道程を、欧米や日本の支援を受けながら歩んでいる国の影の部分も強く浮き彫りにされています。

先月にミャンマー中部、マンダレー地域のメッティーラ(メイッティーラ)で仏教徒がムスリムを襲撃する事件が発生し、周辺地域に拡大した騒動で40人以上が亡くなりましたが、その時の光景をミャンマー警察が収めていたものがBBCで取り上げられました。

折しもヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が、昨年5月末から断続的に西部ラカイン州で発生した宗教間対立による(ラカイン族・仏教徒とイスラム教徒の少数民族・ロヒンギャの)衝突について、ミャンマー政府が「民族浄化(ethnic cleansing)」を”共謀”していたと非難する報告書を発表しましたが、改革を進めるミャンマーにとってこの問題は、おそらく自由民主化が進むほどに糸が絡まっていくものと思われます。

ミャンマ-国民の多く、90%は仏教徒です。彼らはロヒンギャを同じ国で共生する民族でなく、不法移民と見なして冷遇してきました。昨年のラカイン州の騒動で反イスラム感情は強化されたことでしょう。

こうした中、ミャンマーが民主国家として成長すればするほどに、大統領はじめ政治家は国民感情に背を向けてロヒンギャはじめイスラム教徒を擁護するのが困難になってきます。

現にアウン・サン・スー・チー氏もつい最近までイスラム教徒に立って声を上げず、人権団体等から沈黙を批判されてきました。彼女もまたビルマ族、仏教徒であり、国民の多くに支持される政治家としてイスラム教徒に対する攻撃を強く批判することができません。

民主化が進むにつれミャンマーのムスリムに対する風当たりがますます強くなるのではないか、不安にさせられる理由はもう一つあります。それは民主化に伴うメディア統制の緩和です。

メッティーラの事件が発生したとき、最大都市ヤンゴンでもイスラム教徒による報復の噂や敵意を煽るメッセージが流布されましたが、それらはSMSやFacebook、Twitterを介して広まったと指摘されています。市民が自由に情報にアクセスできるようになったこと、インターネットを使えるようになったことで、ネガティブな情報や噂もまた氾濫しやすくなりました。

全体としてミャンマーの民主化は歓迎すべき出来事ですし、圧倒的多数の国民が自由を享受し始めていることは良いことです。しかしその一方で複雑な問題、それも民主化により軍政時代よりも悪化するかもしれない問題が存在していることを肝に銘じる必要があります。

2015年に大統領を目指すアウン・サン・スー・チーや、テイン・セイン現大統領にとって、好転するミャンマーのイメージを傷つけるおそれのある宗教対立とマイノリティの問題は、リーダーシップを試していると言えるでしょう。ミャンマーの民主化がこの先イスラム教徒を排斥するものとならないことを祈るばかりです。

4/20/2013

中国国防白書2013と「核の先制不使用」政策

中国外務省の軍縮局長がジュネーブで「日本に対して核兵器は絶対に使わない」と発言したと、時事通信(2013年4月20日アクセス)などが報じました。また読売の記事(同日アクセス)では「中国は非核兵器国への核兵器不使用を明確にしている」と記者会見で話したとされます。

中国が核兵器を先制使用しないというのは過去の国防白書などでも次のとおり明示されてきました。
中国は国連安全保障理事会の常任理事国と『核兵器不拡散条約(NPT)』を締結する核兵器国として、いついかなる時も、核軍縮の義務を回避することなく、公開、透明、責任を負う核政策を実行している。中国は一貫して、いかなる時、いかなる情況の下でも、先に核兵器を使用しないという政策を厳守し、非核兵器保有国と非核地帯に対しては、無条件で核兵器を使用しないか、または核兵器の使用をもって威嚇しないことを明確に約束した。2010年度「中国の国防」白書和訳
しかし4月16日に公表された最新の国防白書 (英語版日本語訳)においては、中国の過去の戦略文書において重要な礎石であった、はっきりとした「核兵器の先制不使用」に関わる記述が抜けおちています。

2010年の「中国の国防」では「十、軍備抑制と軍縮」という項目があり、ここに前述の核兵器の先制不使用について書かれていましたが、今回の白書では項目は5つに減らされ、軍縮に

先ずは英語版で関係する箇所を抜粋して見てみましょう。

If China comes under a nuclear threat, the nuclear missile force will act upon the orders of the CMC, go into a higher level of readiness, and get ready for a nuclear counterattack to deter the enemy from using nuclear weapons against China. If China comes under a nuclear attack, the nuclear missile force of the PLASAF will use nuclear missiles to launch a resolute counterattack either independently or together with the nuclear forces of other services.
当該箇所の日本語文は次のとおり。国が核の脅威を受けた際は、核ミサイル部隊は中央軍事委員会の命令によって、警戒レベルを高め、核による反撃の準備を整え、敵を威嚇し中国に対する核兵器の使用を抑止する。国が核攻撃を受けたときは、ミサイル核兵器を使用し、単独あるいは他の軍種の核戦力と共同して、敵に対し断固たる反撃を加える。 核兵器で攻撃を受けた際には中国も核兵器を使用して反撃する。このことについての記述のみ残っています。

中国は1998年から国防白書を出しており、今回が8度目になるのですが、過去の文書では必ず「核兵器の先制不使用」についてはっきりと言及していました。

この変化は重要です。また、何を書いているかと同様に何が書かれていないかも中国の政策を理解する上で鍵となるでしょう。

カーネギー国際平和財団のジェイムズ・アクトン氏が19日のNYTでこの点に着目するとともに、習近平国家主席が、核兵器を先制使用しないという約束を演説に入れていなかった(In the speech, Mr. Xi did not repeat China’s no-first-use promise.)ことから、中国の核ドクトリンが"China might use its nuclear weapons first"へとシフトしている可能性を指摘しています。

米中間で核について、高いレベルで継続的に協議・軍事対話を行なう必要があるとアクトンをはじめとして考えている安全保障専門家は多いのですが、どうも中国側が抵抗を示しているようです。

冒頭の中国の軍縮局長の発言は、特定の国(日本)に触れた点で異例とのことですが、「非核兵器国への核兵器不使用を明確」にした一方で核の先制使用について明確に否定しなかった、もっと言えば米国に対して核兵器を先に使用する可能性があるという含みがある点で疑心暗鬼にさせる発言でもあるでしょう。

そもそもこのような発言が出たのは、先の国防白書「中国の戦力の多様な運用」を受けて記者が質問したからではないかと推測しますが。。。