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8/30/2014

ハワイにて

とある安全保障フォーラムのためハワイ・ホノルルに来ています。

今回の会議は米国と台湾のシンクタンクが共催する、台湾や両岸関係、アジア太平洋の安全保障をテーマにしたものです。

今年はNational Interest誌にミアシャイマーの"Say Goodbye to Taiwan"が掲載されたり、5月に習近平がCICA(アジア相互協力信頼醸成措置会議)で「アジアの安全保障はアジアで解決されるべき」と述べたりなど、いつものことですが日本の集団的自衛権行使も含めて話題が豊富で刺激的な議論が展開されました。

米台関係や両岸関係、そして日台関係は私の専門ではないですし、普段日本のメディアにおいて国際関係で台湾に目を向けることは稀なので、いい勉強の機会でした。

ここで全てを書くことはできませんが、「フィンランド化」という表現が何度も登場し、中台サービス貿易協定とそれを受けての向日葵運動が言及され、台湾の未来に対する不安や危機感など、台湾からの参加者を聞いてつぶさに感じ取ることが出来ました。

地域の安全保障は厳しさを増し、と最近よく言われますが、台湾にとっては特に切実です。米国に見捨てられるリスクとそれに対する恐れについては、尖閣を巡って必死に大統領の明示的な確証を取りに行った日本以上です。

また、集団的自衛権を行使可能にしようとする日本に対する期待も強く感じられました。もとより旧宗主国で米国の同盟国で自由民主主義国とあって、日本を味方と見てくれているとは思っていましたが、想像以上のものを同じ若手研究者・専門家の話から感じました。ある意味日本について楽観的に見すぎているのかなという気もしました。

このような国際会議の場に日本の若手が参加し、時に発言しプレゼンスを持つことは非常に大切であると思います。プレゼンターを務めるシニアの見方は当然勉強になりますし、コーヒーブレイク時に質問したり挨拶したりネットワーキングするのも大事です。

さて、余談ですが、用意されたホテルで台湾人研究者と相部屋になり、色々語らうことができました。

彼は私たちが参加しているプログラムに5年以上前から参加してる先輩になるのですが、「昔は日本人と韓国人は仲良くしてたけど、最近はそういう機会が減ったね」という旨を指摘されました。

その時の会議のテーマ、場所によって顔ぶれは変わりますし、個人的にはこれまで行われた会議やワークショップではあまり韓国人と知り合ってないので何とも言えないですが。

この数年間の両国の関係悪化の影響が若手の交流に及んでるとしたら、両国にとって望ましくないことでしょう。米国、台湾の専門家の知り合いを増やすことができたので、次は韓国の知日派とネットワークを形成できたらと思います。


8/21/2014

グローバルスーパーリッチ×ペイ・フォーワード=アイス・バケツ・チャレンジ

むか~しむか~し、あるところに、ホワイトバンド(ry

今巷で話題のALSアイス・バケツ・チャレンジですが、次に3人に繋いでいくというので「Pay It Forward」を思い出しました。いい映画です。泣けます。ハーレイ君が成長する前です。

ALSという難病に対する認知度を高め、かつ寄付を募って研究等を支援するという善行、善意のアクションです。とても素晴らしいと思います。

ですが、個人的にはかなりscepticalにならざるを得ません。アイス・バケツ・チャレンジ以前から、この手のキャンペーンについて疑問を持ってきました。前々から「KONYはどこに消えた?」と問い詰めたいし、ミシェル・オバマの#bringbackourgirlsにイラッとしてきました。





上に挙げた過去の事例でお気づきになられた方はいるでしょうか?

いずれも一過性のキャンペーン、アクションがPRとしては成功したかもしれないけれどもプロジェクトとしてアチーブメントを得られなかったものです。

瞬間最大風速、一瞬の話題性はあるものの、運動として強度・熱量を固定して持続できず、流行が過ぎればそれで終いとなったものです。

先ほど「PRとしては成功」としましたが、啓発という点で考えても、人々に課題・問題を深く理解させることに成功したかは疑問が残ります。ホワイトバンドを「あー、ヒデがやっていたな」ということを思い出せても、何を目的としたキャンペーンだったか思い出せる人間がどれだけいるでしょう?

ビル・ゲイツ、ザッカーバーグ、スピルバーグ、いわゆるグローバル・エリートやセレブリティがWAになって氷水被ることで注目とお金は集まっているけど、ニュースとして消費されてそれで終わりになることを強く危惧する次第です。

次に、数多ある難病や問題の中でただ一つALSが取り上げられて、患者さんとそのご家族、治療法を探す研究者は支援を受けられて救われるかもしれないけど、その他は?

ちょうど今借りて読んでるPlutocrats: The Rise of the New Global Super-Rich and the Fall of Everyone Elseの邦訳から次の部分をご紹介します。


「慈善資本家が及ぼす力は大きく、一国の社会的セーフティネットを意図せず変えることすらある。アフリカの一部の国では苦情が出ている。現地の医師や看護師が、ゲイツの潤沢な資金をもって進められてるエイズ治療薬、結核ワクチン、マラリアワクチンの無料配布プログラムに気を取られ、地味ではあるが、人びとが心から必要とする日常の医療行為をおろそかにしているという」(p120)
ALSアイス・バケツ・キャンペーンはjustでrightだけど、unfair。例えば新井克弥氏の「とりあえず全員がトクする」という見方は、距離を置いて外から見ると必ずしもそうだとは言えないところがあるのではないでしょうか。

繰り返しますが参加者はお金も影響力もある方々です。それがみな一つの方向へ進み、一つの病気をフォーカスしたときの勢いや既に我々が目の当りにしている通りです。それだけに注目やリソースが相当偏ってしまうことを懸念するのです。

このキャンペーンの目的や動機は断じて否定されるべきものではないのですが、それゆえに悩ましいと思います。


8/17/2014

ロシアのウクライナ侵攻?

この1週間弱というもの、ロシアがウクライナに侵攻するのではないかとの見方が各所から示されています。(参考:露軍事専門家・小泉悠氏解説

15日には英Guardian紙はロシアの装甲兵員輸送車23台と補給用のトラックなどの車列がウクライナ領に侵入したと報じました。その後、ウクライナ側からロシアのコンボイを破壊した旨発表されており、ロシア側はこれを否定しました。

これまでのところ「ロシアは本格的な軍事侵攻に踏み切らないだろう」という見方をしてきたのですが、一段と緊張が高まっている今も基本的なラインは変えなくてよいのかなと考えています

ウクライナ東部においてキエフのポロシェンコ政権の統治を否定する武装勢力を支援して不安定化を図る、当初の政策は継続するでしょうが、口実を設けて(人道支援?)大部隊を越境させて云々する可能性は低いと見積もります。

個人的にはロシア側に現時点で軍事侵攻の意図はなく、欧米発の侵攻懸念は情報戦や心理戦の一環なのかなと見てます。根拠は特にないですが。より効果的な作戦を遂行するにはいいタイミングではないのは確かでしょう。

検討すべき要素、リスク因子は多々ありますが、欧米筋から牽制球が投げられている状況で、クリミア併合までのようにスムーズな作戦を展開することは難しいのではないかと見ます。

裏をかいて出し抜くことができなければ、望ましい成功を得るのは難しくなります。

そして、「なぜ今やるのか?」という点でもっともらしいものが無いかなと。不安定化への関与から自ら軍事行動を起こすのはプランにあるにしても、ギアを上げるポイントがここである理由が特にないのではないでしょうか。リスクもコストもかかる介入作戦へ、それは政策の継続でなく一つの旋回(pivot)となる以上、そこには相当な根拠と支柱が要ると見ます。

ロシアにとって、プーチン大統領とクレムリンの面々にとって、主体的に大きなピボットを行うのは、ワシントンの政策立案者が考えているよりははるかに難しいものと見ます。

思えば連合協定潰しにしてもクリミア併合にしても、ロシアは受け手に回っていました。決して場当たり的やその場しのぎとは評価しませんが、必ずしも有利に、上策を打ってきたとは言えないのが実情でしょう。

ここに来てロシアが仕掛ける、というのは一貫していないし合理的でないし、警戒する西側が情報戦で一手封じにかかったというのが個人的見解です。