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7/06/2012

Working as risk analyst~危機管理とインテリジェンスを仕事にして

アナリストとして働き始めてちょうど2か月が経ちました。

私が働いている業界、民間インテリジェンスという括りだと、今流行りの'G-ZERO'のイアン・ブレマー率いる「ユーラシア・グループ(Eurasia Group)」や影のCIAと言われる「ストラトフォー(Stratfor)」、たまにBloombergの記事に名前が出てくる英「Maplecroft社」、ほかには英「ControlRisks社」など、同業他社は英米系が多いです。(ロンドンは保険の中心だけあって、リスクアナリシス&コンサルティングの会社が多いようです。King's War時代には学部事務局のメールにインターン求人が載っていたところもありました)

肝心の仕事の内容ですが、有り体に言えばOSINT、つまりネットで手に入る公開情報やニュースサイトを中心に情報収集し、分析してレポートを書きます。私の場合、担当しているのがアフリカ半分とアジアを数カ国なので、専らBBCやReutersといったニュースサイトの地域ページ、それから各国現地紙のサイトを巡回して使えそうな記事をクリップしていきます。

インテリジェンスなんて言うと格好いいですが地道なお仕事です。よく本でも書かれていますが、ボンドみたいな「スパイ」のイメージとは程遠いです。国家の情報機関だと収集し加工したインテリジェンスを役立てるカスタマーは政策を立案する上級官僚や政治家ですが、私の所属先の場合は民間企業になります。ブレマー氏のような優秀な人材が揃って手広くやっているところだと経営層が主な相手となるのでしょうが、私のところは・・・w

先ずこの世界に興味を示す人、そもそも知っている人が少ないと思われますが、必要とされる能力は語学、情報収集力、分析力、文章作成能力が基本となります。統計でグラフを作るとかパワーポイントを作るといったITスキルは言うまでもなく。しかし何より大事なのは好奇心を持ち続けることだと思います。担当地域と国に興味を抱き、仕事を通じて学び親しみ、それを原動力に仕事のパフォーマンスを高めていく上で必須です。

私が扱っている国の一つにケニアがあります。これまで行ったことはもちろん、研究対象にしたことはアフリカ全体含めてなく、知識ゼロで担当になりました。これを読んでいる人がどういうイメージを抱いているか、そもそも抱けるのかわかりませんが、安全保障とポリティカルリスクの観点ですと、この国の隣国があの失敗国家ソマリアというのが一つのポイントになります。

他国に軍事介入している国というと特にアメリカ、そしてNATOの同盟国である英国や欧州が上がるでしょうが、このケニアが昨年10月以来、ソマリアに派兵して過激派イスラム武装組織のアル・シャバーブ掃討作戦を展開しているのです。ということで、アル・シャバーブによるテロの脅威があって、実際に何度も各地で起きて死傷者が出ている・・・という情勢を把握し、先行きを予測し、何かあったら(あるいはありそうだと思ったら)アラートを出すのが私の務めになります。

上で述べたとおり、幾つかの国を掛け持ちしているので、ケニアだけを見ているわけではありません。他には今注目されているミャンマーを任されています。ミャンマーの場合は主にタイや中国との国境近くで起きている政府と少数民族組織との紛争が主たるモニター対象になっています。

語学と国際関係(安全保障)を学んだこと活かす、という点では願ってもない、そして滅多にない民間の職場ですね。

同時に色々と不満も当然あります。一つは個々の国のカントリーリスクを分析するので、マクロよりもミクロ、サードイメージよりもセカンドイメージに偏りがちになります。より広い文脈、周辺諸国との関係などを踏まえて見る事例もたまにはありますが基本ないです。

次に、アナリストとして作ったインテリジェンスがどれだけ生産的で活用されているのかが見えない点です。淡々と仕事をこなしているけど成果のほどが可視化されない、これは将来的にカスタマーのフィードバックを得るという作業を制度化する必要性があるなと2ヶ月足らずで強く感じているところです。

最後に、ある意味人の不幸を飯の種にしているわけでして、紛争やテロを言わば「商材」に稼ぎを得ている吸血鬼的なところがありまして、そこは割り切ることが大事です、顧客である日本企業とその組織人が被害に遭わないように情報を武器にしていると。

まだ2か月しか経っていませんが、組織面を含めて問題意識を抱えつつ、色々吸収しながら道を探っているところです。仕事を通じてニュースソースがさらに増えましたし、テロリズムや民族紛争といった非国家主体の事象について理解を深めるいい機会かなとも思っています。

当分アカデミックな安全保障論や外交・国家戦略のお話から離れがちになりますが、その分、担当地域についてブログで取り上げていく所存です。