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8/19/2015

約1か月ぶりに安保法制をフォローする~PKO協力法編

 1か月以上間が空いてしまいましたが、今日から再開です。

 ちょうど国会審議で、駆けつけ警護に関する統合幕僚監部の内部資料が話題となっていますが、今日は国際平和協力法(PKO協力法)の改正についてフォローしていきたいと思います。

 PKO協力法の改正では、PKOに参加する自衛隊が実施できる業務の拡大と、非国連型(国連が統括しない)「国際連携平和安全活動」の新設の2つが大きな柱です。

 PKO業務は、従来、停戦監視や被災者支援を行ってきましたが、これに加えて安全確保、そして「駆けつけ警護」が業務に加えられることになります。

 「駆けつけ警護」について簡単に説明しますと、他国軍部隊や住民、NGO等民間人に対する武力攻撃が発生した際に、自衛隊が救援に当たるというものです。
 
 この「駆けつけ警護」や安全確保業務を可能とするにあたって武器使用基準で「任務遂行のための武器使用」を認めることとなります。

 これまでは「自己保存型」、つまり部隊・隊員の自衛に際してのみ武器使用が認められていましたが、救援という任務のための武器使用、場合によっては襲撃している武装勢力等に対する発砲等が可能となります。

  日本のPKO参加5原則(後述)では紛争当事者間の停戦合意がPKO参加の前提となっており、自衛隊や他国軍が派遣されるのは現に戦闘が発生していない地域ですが、政情の急変、紛争の再燃という緊急事態が発生した場合、自己保存はもちろんですが、紛争で危害が及びかねない住民等の保護が求められる場合があります。
 
 次に「国際連携平和活動」です。PKO、平和維持活動はその多くが国連の統括の下に実施されていますが、国連以外の主体、例えば地域機構が、平和維持活動を実施しているケースがあります。

 具体的にはソマリアでアフリカ連合(AU)が行っている「ソマリア平和維持活動(AMISOM)」が挙げられます。また、現在では国連PKOに移行していますが、西アフリカのマリ北部を過激派武装勢力が勢力を拡大した当初は、ナイジェリア等西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)によって編成されたアフリカ主導の軍事ミッション(AFISMA)が展開して事態に対応しました。

 このように、国連以外の枠組みでの平和維持活動、国際連携活動が行われるようになっており、それに日本も参加できるようにするというのが法改正のもう1つの目的です。

 ただし、なんでも「国際連携平和活動」ということで自衛隊を派遣できるわけでは、当然ありません。

 先ず、日本にはPKO参加5原則があります。

① 紛争当事者の間で停戦の合意が成立している
② 国連平和維持隊が活動する地域の属する国及び紛争当事者による我が国の参加への同意
③ 国連平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的な立場
④ 上記原則が満たされない状況が生じた場合、我が国の部隊が撤収できる
⑤ 武器使用は要員の生命等の防護のための必要最小限のものを基本とする

 これに加えて、「国際連携平和活動」参加のための要件が設けられています。

 簡単に並べると国連の決議、国連機関もしくはEU等地域機構の要請、そして平和維持活動が行われる国の要請がありかつ国連主要機関の支持があることです。

 PKO、またはこれに類する平和維持活動そのものは、「国際平和協力」であり国家として自衛権発動には当たらないですし、国連PKOはもちろんのこと、「国際連携平和活動」も国連決議等、国際法上合法、禁止されている戦争にはあたらないと理解されます。

 我が国においては派遣された自衛隊部隊が部隊・要員の自衛(正当防衛・緊急避難)においてこれまで武器使用を認めてきましたが、今後は業務の拡大に伴い、活動地域の治安が悪化した際にも武器使用が求められ、認められるケースが出てきます。

 国家としての集団的自衛権の発動(密接な関係にある国Aが攻撃を受けた場合に日本が共同対処する)ではありませんが、部隊レベルの集団的自衛権の発動(他国軍、住民、国連職員、NGO等民間人が危機にある際に派遣部隊が対処する)と言えるでしょう。

 PKO協力法関係は以上です。次ですが、「重要影響事態」に関する2つの法律、周辺事態安全確保法改め「重要影響事態安全確保法」と「船舶検査活動法」改正について見ていきます。



7/20/2015

平和安全法制整備法で改正される法律を今更ながら見ていく~自衛隊法編

平和安全法制整備法と国際平和支援法は衆議院を通過し、参議院に送られましたが、10本の法律をまとめて改正する(+附則によりさらに10本の関連法の技術的な改正を行う)前者は複雑です。

なので1本1本、今回の法改正で何がどう変わるのかを見ていきたいと思います。

本日は「自衛隊の任務、自衛隊の部隊の組織及び編成、自衛隊の行動及び権限、隊員の身分取扱等を定める」(隊法1条)、自衛隊法の改正について見ていきます。

今回の主な改正事項は

① 在外邦人等の保護措置 (新設、第84条の3、第94条の5)
② 米軍等の部隊の武器等の防護 (新設、第95条の2)
③  平時における米軍に対する物品役務の提供の拡充 (第100条の6)
④ 国外犯処罰規定の整備 (第122条の2)

です。これらは概ね集団的自衛権とは関係ない項目です。

集団的自衛権(存立危機事態)に関係する部分は後述します。

①「在外邦人等の保護措置」は

1)外国における緊急事態発生時に、
2)当該外国の当局が治安維持にあたっており、かつ、戦闘行為の可能性がない場合
3)当該外国の同意を得て、
4)邦人等の警護、救出、輸送その他の措置を自衛隊ができるようになります。

武器使用については正当防衛・緊急避難の場合に許容されます。

これは集団的自衛権の行使とは直接関係ない事項ですね。おそらくは中東や北アフリカ(アルジェリアやチュニジア)で相次いだ過激派組織による邦人テロ被害を受けて議論してきたものを、今回の法改正に盛り込んだのだと思います。

②「米軍等の部隊の武器等の防護」は、

1)共同訓練をはじめとする自衛隊と連携して日本の防衛に資する活動(現に戦闘行為が発生している現場で行われるものを除く)をしている米軍やほかの国の軍隊の武器等を、
2)米軍やその他の軍隊から要請があり、
3)防衛大臣が必要と認めた時に、
4)自衛隊が防護でき、
5)正当防衛・緊急避難に当てはまる場合には武器の使用も認められます。

表現がややこしいですが、1)の「自衛隊と連携して日本の防衛に資する活動(現に戦闘行為が発生している現場で行われるものを除く)」と5)の武器使用権限から、これも集団的自衛権の行使と関係ないものと判断されます。


③「平時における米軍に対する物品役務の提供の拡充」は、簡単に言えば「自衛隊の部隊と一緒の現場で活動する」米軍を新たに対象とします。具体的には次のシチュエーションで一緒に行動する米軍部隊が支援対象に追加されます。

1) 自衛隊施設や駐留米軍施設に対する破壊(テロ)のおそれがあるときの警護出動
2) 海賊対処行動
3) 弾道ミサイル破壊措置をとるために必要な行動
4) 機雷ほか爆発性の危険物の除去処理
5) 在外邦人等の保護措置
6) 船舶または航空機による情報収集・偵察活動

また、これらの活動に際して弾薬の提供が可能になります。そのほか、米軍施設に一時的に滞在する自衛隊と一緒にいる米軍が、自衛隊施設に一時的に滞在している米軍と同様に物品役務提供の対象となります。

ここで言う物品・役務ですが、「(武器をのぞく)補給、輸送、修理及び整備、医療、通信、空港及び港湾業務、基地業務、宿泊、保管、施設の利用、訓練業務、建設」を指します。


④「国外犯処罰規定の整備」では、

1) 上官の職務上の命令に対する多数共同しての反抗および部隊の不法指揮
2) 防衛出動命令を受けたものによる上官命令反抗・不服従等

が、日本国外においても国内同様罰せられるようになります。既存の条文の適用拡大です。

長くなりましたが最後に「存立危機事態」、本筋である集団的自衛権の行使に関係する改正です。

第76条の2が新設され、存立危機事態(我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態)にも、日本に対する武力攻撃が発生した際、すなはち個別的自衛権を行使する場合と同じく、「防衛出動」ができるようにするものです。

防衛出動にあたっては、「原則、事前の国会承認が必要」となります。例外として緊急で事前承認を得る余裕がない場合は事後承認となっていますが、これは従来の個別的自衛権に基づく防衛出動と同じ扱いです。

さて、ここまで自衛隊法の改正案について大まかに見てきましたが、集団的自衛権と関係しない項目もあり、要領を得ないところが多いと思います。

実はこれ以外にも、存立危機事態、重要影響事態に関係する事態対処法制や、PKO協力法の改正、国際平和支援法の新設を受けて条文が追加されたり変更されている箇所があり、そちらも参照しないと全貌を把握できないものとなっています。

(なので、最初に基本である自衛隊法改正を取り上げましたが、他の法律の改正について巡った後、もう1度カバーいたします)

最初に「複雑です」と記しましたが、これを広く国民に理解してもらうというのは極めて困難な作業です。

次回は国際平和協力法(PKO協力法)の改正箇所を見ていきます。



7/15/2015

政府の憲法解釈の歴史を今更ながら復習する(冷戦終結から現在まで)

山岡「この集団的自衛権は出来損ないだ。食べられないよ」

前編の流れをざっとまとめます。


① 日本国憲法審議過程 「自衛権(の発動としての戦争)も認められない」by吉田茂
② 朝鮮戦争勃発時 「集団的自衛権は国家固有の権利(共同行使説)」
              「集団的自衛権の国外での行使は認められない」
③ 1960年 「日本防衛のための米軍との共同対処は個別的自衛権」
④ 1964年 「他国防衛のための集団的自衛権の行使は認められない」
⑤ 1981年 「集団的自衛権を有しているのは当然だが、行使は認められない」


ベルリンの壁が崩壊しソ連が解体され、国際情勢が大きく変化した90年代の新たな世界で、日本では国連活動(多国籍軍)への協力という文脈で自衛隊の海外派遣が議論の対象となります。

1991年の湾岸戦争への対応が大きな問題になったことは言うまでもないでしょう。総額135億ドルの資金援助を実施したがクウェート政府からの感謝決議に日本が入っていなかったことが問題となりました。

90年代前半は多国籍軍へのアプローチと、PKO活動への参加の是非が大きなイシューとなりました。

先ず「国連軍」への対応として、(1)国連軍の指揮下に入る「参加」は、武力行使を伴うのであれば憲法上認められない (2) 国連軍の組織の外で行う各種支援を含む「協力」は、武力行使と一体化しなければ認められる。という統一見解が示されます。

「参加」と「協力」を分けた上で、後者は容認するという見解です。

PKOについては1992年に「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(PKO協力法」が成立します。2001年には、現在の内閣官房国家安全保障局長である谷内正太郎氏が、国会でPKOと集団的自衛権に関してつぎのように答弁しています。

「PKOは、国連が世界各地における地域紛争の平和的解決を助けるための手段として、実際の慣行を通じて確立してきた一連の活動であり、基本的に中立非強制の立場で行われるものであるから、このようなPKOへの参加は集団的自衛権の行使に当たらない」

また「武力行使との一体化」について、大森内閣法制局長官(当時)が96年に次の4つの判断基準を挙げています。

①戦闘行動の拠点と当該行動の場所との地理的関係
②当該行為の具体的内容
③各国軍隊の武力行使の任にある者との関係の密接性
④協力しようとする相手方の活動の現況等


すはわち、個別具体的なケースを見て判断すべきという方針です。

橋本、小渕内閣では、例えば後方支援としての米軍への武器弾薬の輸送は集団的自衛権の行使にあたらないという見解が示されました。

この「武力行使との一体化」の回避による活動範囲の拡大は、00年代の同時多発テロ以降のテロ対策特措法、イラク特措法における「非戦闘地域」という概念に繋がっていきます。

00年代、小泉政権とそれに続く第一次安倍政権では、「テロとの戦い」と、米国とのミサイル防衛(MD)の構築を背景に、集団的自衛権についての研究が行われます。

「憲法に関する問題について、世の中の変化も踏まえつつ、幅広い議論が行われることは重要であり、集団的自衛権の問題について、様々な角度から研究してもいいのではないかと考えている。」(第 151 回国会衆議院土井たか子議員提 出の質問主意書に対する答弁書[内閣衆質 151 第 58 号] 平成 13 年 5 月 9 日)


「大量破壊兵器やミサイルの拡散、テロとの闘いといった国際情勢の変化や、武器技術の進歩、我が国の国際貢献に対する期待の高まりなどを踏まえ、日米同盟がより効果的に機能し、平和が維持されるようにするため、いかなる場合が憲法で禁止されている集団的自衛権の行使に該当するのか、個別具体的な例に即し、よく研究してまいる」(安倍晋三首相の発言。第 165 回国会衆議院会議録第 3 号 平成 18 年 9 月 29 日)

このうち、ミサイル防衛について政府は2005年に自衛隊法を改正し、同法82条の3で迎撃手続きについて定めていますが、 同措置は
「自衛隊法上の任務として公共の秩序の維持に該当し、 あえて整理すれば、警察権の行使に相当するものと言ってよい」(大野功統防衛庁長官の発言。第 162 回国会衆議院会議録第 16 号 平成 17年4月1日)
と警察権の行使とし、集団的自衛権の範囲外に置くことでクリアしています。

2度の政権交代を経験した後、第2次安倍政権において再開された「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(通称、安保法制懇)が、2014年5月15日に報告書を提出します。(ちょうどこの1年後に「平和安全法制整備法」と「国際平和支援法」が国会に提出されます)

安保法制懇の集団的自衛権に関する解釈についての提言は次のとおりです。



「憲法第9条第1項の規定(「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」)は、我が国が当事国である国際紛争の解決のために武力による威嚇又は武力の行使を行うことを禁止したものと解すべきであり、自衛のための武力の行使は禁じられておらず、また国連PKO等や集団安全保障措置への参加といった国際法上合法的な活動への憲法上の制約はないと解すべきである」



「憲法第9条第2項は、第1項において、武力による威嚇や武力の行使を「国際紛争を解決する手段」として放棄すると定めたことを受け、「前項の目的を達するため」に戦力を保持しないと定めたものである。したがって、我が国が当事国である国際紛争を解決するための武力による威嚇や武力の行使に用いる戦力の保持は禁止されているが、 それ以外の、すなわち、個別的又は集団的を問わず自衛のための実力の保持やいわゆる 国際貢献のための実力の保持は禁止されていないと解すべきである」
これを踏まえて2014年7月1日に臨時閣議で決定された解釈が以下のとおりです。

「憲法第9条が,我が国が自国の平和と安全を維持し,その存立を全うするために必要な自衛の措置を採ることを禁じているとは到底解されない。一方,この自衛の措置は,あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命,自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫,不正の事態に対処し,国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置として初めて容認されるものであり,そのための必要最小限度の「武力の行使」は許容される。これが,憲法第9条の下で例外的に許容される「武力の行使」について,従来から政府が一貫して表明してきた見解の根幹,いわば基本的な論理であり,昭和47年10月14日に参議院決算委員会に対し政府から提出された資料「集団的自衛権と憲法との関係」に明確に示されているところである。 この基本的な論理は,憲法第9条の下では今後とも維持されなければならない」

「我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず,我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し,これにより我が国の存立が脅かされ,国民の生命, 自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において,これを排除し,我が国の存立を全うし,国民を守るために他に適当な手段がないときに, 必要最小限度の実力を行使することは,従来の政府見解の基本的な論理に基づく自衛のための措置として,憲法上許容されると考えるべきである」

「憲法上許容される上記の「武力の行使」は,国際法上は,集団的自衛権が根拠となる場合がある。この「武力の行使」には,他国に対する武力攻撃が発生した場合を契機とするものが含まれるが,憲法上は,あくまでも我が国の存立を全うし,国民を守るため,すなわち,我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として初めて許容されるものである」


いやはや長かったです。最初のと比較すると

「集団的自衛権の国外での行使は認められない」→要件を充たせば国外でも可。
「他国防衛のための集団的自衛権の行使は認められない」→基本的に変わらず。
「集団的自衛権を有しているのは当然だが、行使は認められない」→行使は限定的に認められる。

という変化でしょうか。

「自国と密接な関係にある外国に対する攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力を以て阻止する権利」を、「存立が脅かされ(中略)明白な危険がある場合において」行使できるというものです。


さて解釈の変遷をフォローし終えましたが、次回以降は、平和安全法制整備法案で、具体的に自衛隊法以下がどのように改正されるかを追っていこうと考えています。


7/11/2015

集団的自衛権を今更ながらおさらいする

前回に続いて「安保法制」についてフォローしていきます。法案について掘り下げていく前に、今回の法改正・立法の中心にある集団的自衛権についてやります。

国会の審議を通じて、「集団的自衛権」の「行使」を可能とする「解釈」が合憲か違憲かで、大きな論争が起きましたが、そもそも「(集団的)自衛権」とは何かという話をしたいと思います。

他国に対して武力を行使することは、国際法上許されていないですが、「自衛」、他国の侵略行為や攻撃を撃退し、自国を守る範囲においては認められています。

個人のレベルで言えば、人を殴るのは普通は犯罪ですが、暴漢に襲われた場合に身を守るため・抵抗する上では殴ったり蹴ったりしても「正当防衛」が認められます。

この自衛権に関して、日本国憲法に規定はありません。他国でも憲法に明記しているところはそう多くないと聞きますが、国家の「自然権」としてこれを認めていますし、国際法上では国連憲章第51条で明文化されています。

日本もまた自衛権を保有しています。ここでポイントなのは、政府解釈では「個別的自衛権」も「集団的自衛権」も、「保有している」ということです。

そして「個別的自衛権」は行使もできるが、「集団的自衛権」は行使はできないというのが従来の政府解釈でした。これを昨年7月に安倍政権が「一部できる」という解釈に変更しました。

次に「個別的自衛権」と「集団的自衛権」について見ていきましょう。

自衛権が個別的・集団的に区別されるようになったのは、先の大戦後、南米諸国の働きかけを受けて国連憲章に明記されたのがはじまりです。(その詳細な経緯はこちらのブログに詳しいです)比較的新しく、しかも国際秩序形成を主導してきた欧米によるものではないというのが一つのキーですね。

国連憲章51条の前半(原文)を見てみましょう。

Noting in present Charter shall impair the inherent right of individual or collective self-defence if an armed attack occurs against a Member of the United Nations, until the Security Council has taken measure necessary to maintain international peace and security. 

個別的・集団的を問わず、「国連安全保障理事会が国際平和と安全を保つために必要な措置を講じるまで」の、窮余の策、つなぎとして認められています。

「個別的」については説明は特に要らないでしょう。危害を加えられた・加えられそうになったら身を守る、そうしなければ侵略され占領され国家が亡くなってしまいます。

交戦権、国際紛争を解決するための戦力を放棄した日本でも、個別的自衛権は否定できません。日本がなくなれば、憲法も存在し得ないですしね。

さて、問題は「集団的」です。日本は攻撃を受けていないがアメリカが攻撃を受けた、という場合です。日本は違法な侵害を受けていないので、武力を行使しなくても無事です。(ここでは同盟や抑止については触れません)

日本政府は「自国と密接な関係にある他国に対する攻撃を、自国の攻撃とみなし、自国の権利が侵害されたとして、他国を守るために防衛行動をとる権利」を「集団的自衛権」としています。ちなみにこの考え方を個別的自衛権合理的拡大説といいます。

個々人のレベルに置き換えると難しい話ではありません。自分以外、家族や友人は言うまでもなく、他人でも強盗・凶漢に襲われているところを武力を行使して助けるのは「正当防衛」であり罰されません。

これを日本という国家で見ると話はややこしくなります。日本は「武力を行使できない」としています。(繰り返しになりますが、日本が滅亡すれば憲法も何も意味を成さないので、個別的自衛権については保有もしているし行使もできるとしています)

国際法で国家として認められた権利がある一方、日本は自らに制約を課しているという状況です。前述のとおり、「自衛権」についての明文化された既定はありません。ゆえに、「個別的」「集団的」自衛権については他の条文から導き出された「解釈」があるのみです。

ここまで集団的自衛権の実態を簡単におさらいしました。

次回はその「解釈」について、これまでの流れを辿っていきたいと思います。

9/26/2014

東アジアの安全保障と潜水艦

英王立国防安全保障研究所(RUSI)が発行するNewsbriefで、南洋工科大学RSIS国防戦略研究所のMichael Raska研究員が東アジアにおける潜水艦の近代化(modernisation)について分析しています。一言で「潜水艦は東アジアでますます価値のある戦略的資産(strategic asset)になっているよ」とまとめることができます。

冒頭で7月に韓国のType214潜水艦が進水したことに触れ、地域の各国にとって同型のようなディーゼル・エレクトリック方式通常動力潜水艦がトレンドとなっており、これが地域の戦略環境を反映しているとしています。

例によって中国の列島線、A2/AD戦略、急増する軍事費をなぞった上で、かの国の潜水艦陣営を取り上げています。中国が現在保有しているのは6つの型(うち通常動力2タイプ、原子力4タイプ)計45隻と見積もられています。注目しているのが2004年から12隻配備しているとされる元級、同研究員は人民解放軍海軍(PLAN)が同型を20隻まで増やして、ロシア製艦艇やドイツから輸入したエンジンから選択的に技術を採用して云々するのではないかと見ています。

The  PLAN  may  introduce  up  to
twenty additional Yuan-class submarines
utilising  other  key  technologies
selectively adapted from Russian boats
and  imported  German  diesel-electric
engines.  
中国は90年代半ばから、ロシアから多くて12隻のキロ級潜水艦を調達し、第4世代アムール級を少なくとも4隻購入するか検討していると報じられ、あるいは現在開発初期段階のカリーナ級にも関心があるとのこと。このような中国の潜水艦戦力増強に対し、日本や前述の韓国も対応し新造艦の調達を志向しています。

東アジアだけではなく、東南アジアでも潜水艦は重要な存在で、こちらのThe Diplomatの記事では、ベトナムがロシアから購入したキロ級潜水艦で対中非対称戦略、対中抑止能力の向上を図っていることを取り上げています。5月に南シナ海のベトナム側のEEZ内で中国海洋石油総公司が石油掘削装置を設置したことで一悶着あったベトナムは、2009年にロシアからキロ級6隻を購入することを決定し、2016年末までに様になる抑止戦略を運用し得るようになるとのことです。